Monthly Web Magazine Mar. 2014
■■■■■ 桜の季節が待ち遠しくて 田中康平
3月は美しい。梅を追う様に桜の季節が間もなく始まる。
つい数日前別府温泉に遊びに行った。大した動機があったわけではないが今から思えば別府温泉の圧倒的湯量を感じてみたかったような気がしている。
別府というと地獄めぐりが目玉のようで血の池地獄から周りはじめる。なかなか面白いが次第に疲れてくる。8つの地獄の共通観覧券を買ってしまったので疲れてきても有無を言わさず周っていくほかない。山地獄までたどり着いたころふと見ると桜が咲いている。見たことのない姿だが、この時分に咲くピンクの桜といえばきっと河津桜に違いないと決めうって後でネットで調べる。鳥でも植物でも名前を解って眺めるとまたいい、一歩踏み込む感じがある。色々画像を出してみて撮ってきた写真と比べると河津桜に良く似ている、この際河津桜ということにしてしまう。桜の品種はいまだに解らないものがある、古い桜はみなエドヒガンザクラかヤマザクラかと思って見ている。
15年位前に冬桜というのを見たくなって12月のはじめに群馬の鬼石を訪れた。埼玉の長瀞の近くということになる。このあたりは余所者には県境が解り難い所ではある。かなり広いうねった丘状のところに沢山の冬桜があってひっそりと咲いていた。春の桜の華やかさは無い。あの華やかさは花で満ちたもわっとした春そのものが醸し出している雰囲気のような気がしている。
福岡ではこの冬植物園に植えられている冬桜をみた。これは更に味気ない。生きた標本を眺めているような気になる。桜らしくない。
早い桜といえば沖縄の今帰仁城跡の寒緋桜がある。以前11月末に訪れた時数輪もう咲いていた、日本で一番早い桜ということになっている。しかしこれも数輪ではさびしい。
桜は満開に限る。梅はつぼみと混じったあたりが面白い。散っていく姿もいつの間にか花が少なくなっていくようなひっそりとした散り方で情緒がある。梅の花吹雪というのにはお目にかかったことが無い。しかし桜は何といっても溢れんばかりの満開がいい。
寒の戻りがきて冷えた北風が吹きすさぶと今年も始まろうとしている華やかでたわわの花の季節が待ち遠しくも思えている。
写真は順に
別府・山地獄の河津桜 2014.3.4
鬼石の冬桜 2000.11.25
福岡市植物園の冬桜 2013.12.4
沖縄・今帰仁城跡の寒緋桜 2010.11.25
宇都宮旧宅のソメイヨシノ 2012.4.12
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