Monthly Web Magazine Apr. 2014

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■■■■■ 九州の花見をしながら 田中康平

春の荒れた天気が周期的に続く。

北極付近の上層にある寒冷な大気塊が波動的に南へ降りてくるため南の温暖な大気とぶつかり合う日本付近がどうしても周期的に不安定な天気となる。

近頃は幾分荒れ方が大きくなっているような気もする。

地球の温度の安定に大きな役割を果たしている海流の動きが少し変わって暖流の北上が少しばかり弱くなっているのかもしれない。

ともかくこの数年暑い夏と寒い冬が同時進行しているようで、その分季節の変わり目では激しい天気となってしまう。

今年は春先から土日に荒天のサイクルが合っている様な気もする。

1年半ほど前から仕事を終わったのんびりとした生活に入っているが、こんな時は天気の良いときだけ外に出かけることができてストレスが無い、いい身分でといわれても仕方がない。

引っ越して1年少しということもあり、九州の桜の名所はどこだろうとネットで幾つか当たるがどうにもネットは通り一遍の紹介というニュアンスがあって「この木」という情報が不足するところがある。

本も幾つか探しているうちに図書館で「九州の一本桜」という写真集に行き当たった。

梅野秀和という佐賀県在住のアマチュアカメラマンの写真集だ。

かなり長い期間にわたってしつこく九州の桜を追いかけた人のようだ。

いい本で求めていたイメージに近い、早速借り出してきて日帰りで気楽にいけそうなところから回り始めてみる。

3月下旬に満開のところを先に回るとして、八女・黒木のシダレザクラと佐賀・神埼町のヒメシダレザクラが丁度よさそうだと出かけることにした。

行きがけの駄賃にレンジャクが来ているという都府楼跡にも寄ってみることにする。

天気は疑いも無く晴れで風が弱いという日を慎重に選んで出発する。

桜が満開の時期にこれができるのは贅沢というものだ。

太宰府都府楼跡のレンジャクは駐車場に車を置いたすぐ前の桜の木に居て拍子抜けするほどあっさり見れる。美しい。

関東に居たときも冬から春にかけてはレンジャクをどこかでみようとあちこち動き回って苦労した記憶がある。

キレンジャクが4羽くらい残っていてヒレンジャクは飛び去ったらしい。

世界的にはヒレンジャクのほうが珍しいのだが日本では逆のようでキレンジャクを有り難く感じる。

大きさといい堂々たる風情といい見入ってしまう鳥だ。

いい感触で、八女・黒木の桜に向かう。

八女は行ったことがないところだ。筑後川の下流にあたる平野には街が八女、久留米、鳥栖、柳川、とひしめいていてその先に佐賀市も続く地域だが、県境と街が入り組んでいてどこがどこだか印象に刻まれにくい。

ともかく筑後川の一支流を遡る形で八女市街をバイパスして西へ向かう。

黒木はあまり大きくない町だ。八女はお茶で有名だがそれにしても茶畑は見えてこない。どこでお茶の栽培をしているのだろうか、予想していた茶畑の広がる景観には出くわさない。

ナビで目指す光善寺のシダレザクラはここら付近というところまでくるがこちらもどこに桜があるかわからない。

とりたてて桜の案内板もないし何しろ道が細い。

近くの神社に車を入れて歩いて探し回ると、やっとそれらしい大きなシダレザクラが見えてくる。

駐車場も小さいながら一応用意してあるようだ。しかし解りにくいし車も入れにくい。こんなところに土日に来ると車は大渋滞になりそうだ。

シダレザクラは満開でなかなかいい。緩やかな風にそよぐ桜をぼんやり見る。春はこれに限る。

見ている人は10人くらいで地元の人が多いのだろうか、花見はそっちのけで立ち話している人も居る。

花をさかなに人が集まる、花見はそんなものかもしれない。

じっと見ていてもどうということもなく手持ち無沙汰になる。

だから写真でもと撮ることになるのだろうか。

どんな花だろうか今年はどうだろうかと人は吸い寄せられて行き着いてみると存外花はちょっと見て別のことを思っている、そんなものかもしれない。

そういう花見が花見らしい様にも思えてくる。

見終わるころには駐車場も満杯になってきて次の佐賀・神埼に向かう。

高速道を経由して辿り着くとこちらは黒木の桜より少しは名が知れているらしく離れたところに駐車場が用意してあって解りやすいし渋滞を避ける工夫がある。

徒歩で向かう田舎道にもきめ細かく案内板があって安心して春の野に咲く草花を楽しみながら行き着けるように工夫がある。

あちこちで思うのだが佐賀は車社会に対する対応が優れているようだ。

目指す宝珠寺の前に着くと道端で「九州の一本桜」の写真集を売っている、ここらでは特に有名な本でもあるようだ。

さて宝珠寺のヒメシダレザクラだ。樹齢100年位でまだまだ元気がいい。

ベンチに座って見上げるようにしながら暫く時を過ごす。

見ることもなく見ていて時間が流れていくのがすこぶるいい。

見に来た人のざわめきや住職らしい方が行ったり来たりと不思議な動きをしているのも面白い。

写真をとりとめもなく写してしまう。

風景を眺めていると由緒や名木がどうという言葉が消えていくようなのもいい。

そんな時間の流れが花見らしいとここでも感じる。

この後 近くの山桜を見、日を変えて伊万里の明星桜(エドヒガン桜)を見、久留米のヤマザクラを見、秋月や唐津や福岡のお花見風景を見る。

それぞれに印象があり異なった空気を与えてくれるが花が発する何かというより取り巻く雰囲気と花見をしそれを感じる自分の心の動きそのものが面白い。

こんな風景に浸っていることがいいようがなく心地よくて、やはり花見はやめられない。

写真は順に、都府楼跡のキレンジャク、光善寺のシダレザクラ、宝珠寺のヒメシダレザクラ、神埼の野道、花浦のヤマザクラ、伊万里の明星桜、久留米・浅井の一本桜、秋月の桜並木、唐津城の桜、福岡・西公園の桜

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