Monthly Web Magazine December 2014


■■■■■ スコットランド最北部の風景 野崎順次 

英国の友人が時折メールで写真を送ってくれる。40代後半の既婚男性でエイドリアンという。ヨークシャー生まれのイングリッシュで、現在はロンドン郊外のレッドヒルに住んでいる。彼はストイックなアウトドア派で、マラソン、自転車レース、登山など厳しいスポーツが好きである。やや小柄な鋼のような身体でスキンヘッドである。ハーフマラソンは1時間40分、100マイル(160km)の自転車ロードレースで4時間8分、若いころはテントを担いで当時のガールフレンドとピレネー山脈縦断600kmを踏破したという。奥さんも活動的な人だが、運動能力に差があり過ぎて、一緒について来るのはまれである。

最近、彼は一人でスコットランドのお母さんに会いに行った。そのついでにハイランド州ケイスネス郡の荒野を彷徨った。グレートブリテン島はつっかかる軍鶏の形に似ているが、その鶏冠の先っぽにあたる。ケイスネス郡の西隣はサザランド郡で、このあたりはヨーロッパでもっとも人口密度の低い地域の一つである。ケイスネスは香川県とほぼ同じ面積で人口は2万4千人(2001年)、サザランドは千葉県と同程度で人口僅か1万4千人(2001年)である。古くはノース人(バイキング)の勢力下にあって多くの遺跡が残っている。

最初のメールでエイドリアンいわく、

「最近、スコットランドの母を訪ねました。そのついでに以前から行ってみたかったケイスネスの荒野を見て回りました。

ご存知かどうか、ケイスネスは実に広々とした土地で、植物や太陽を遮るものはほとんどありません。このような地域のサイクリングは難しいものです。何故なら、道は10km近く直線で続き、地平線には目印すらないのです。激しい風にも脅かされて、目的地に到達できないのではないかと恐れます。もちろん風は見えませんが、絶えず存在して、この地域を特徴づけています。

その他の特色は古代の歴史とバイキングによる占拠です。立石、石室のある墳墓、ブロッホ(円形の積石塔)、見捨てられた村落跡など古代の遺跡が多く存在し、ほとんどが自由に入って見学できます。」

私自身がケイスネスをGOOGLE EARTHで見ると、イングランドと同じような畑と牧場のパッチワーク模様が見えて、荒野ではないように見えた。そのことを伝えると、あの地上の索漠感は想像できないといってきた。その代りに5年前にサザランド郡で登山をした時の写真を送ってくれた。スコットランドでは3000フィート以上の山をマンロー(Munro)と呼ぶ。その中でも人気の高いのがサザランドのベン・ホープ山(3040 ft)で、その山頂から撮った。なるほど荒涼とした岩山地帯である。

最後にサザランド西海岸の幹線道路の写真があった。思わず笑ってしまった。ヒツジ数頭という超軽交通である。

しかし、夏にはオランダとドイツから多数のキャンピングカーがやって来るのでフラストレーティングだといっていた。

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