Monthly Web Magazine Sep. 2016
■ おばちゃんカメラマンが行く 高野山一乗院と城崎西村屋 庭付きお宿体験 事務局
普段は旅館でもホテルでも窓からの景色で、オーシャンビューとか渓流側とか選ぶのだが、今回 庭園(庭)付きの宿に泊まる事ができた。
高野山一乗院(いちじょういん)の宿坊
歴史的な詳細は不明だが、平安時代前期に 善化上人が開基した。
その後時を経て、高野山の「明治の大火」で類焼し焼失 。
今ある建物は1888年に再建されたものである。
(蛇足だが高野山には117の寺があり宿坊として半数が一般人を受け入れている)
1500坪もある境内の中央に庭はあり、典型的な回遊式庭園で、中央部分は金亀、その左手には蓬莱、方丈、瀛洲、壷梁の四神島(蓬莱島)がある。
流れる水の音と手入れの行き届いた深緑の植栽が宿泊客を癒してくれる。
さすが寺院の庭園だけのことはあり、造りに凛とした雰囲気が漂う。夜になれば、静寂な境内と思いきや、大ガエルの大合唱だ。
いつの間にか鈴虫的鳴き声も加わり賑やかだ。これもまた好し。
寺で酒を飲みながら庭を拝観することは叶わないが、宿坊ならば許してもらえるだろう。いい気分にさせてくれる。
150年の歴史を持つ純和風旅館で、庭を囲むようにある客室からの眺めは部屋によりそれぞれ趣がある。
一乗院とは異なり旅館なので客は庭を浴衣と下駄で散策したり、片隅にある神社をお参りすることもできる。
私の部屋は池に大きく張り出しており真下に鯉が泳いでいる。
庭を上から眺めたり、散策して同じ目線で見たりと楽しみ方もいろいろだ。
本格的な浴衣と帯で夜の温泉街をそぞろ歩くのもまた楽しい。
日本人に生まれて良かったとつくづく思う。
幼いころ縁側に座って庭を眺めながらスイカを食べたりお月見をしたり猫をかまったりと、いろいろな事がついこのあいだのように感じられる。
旅先から帰るとあっという間に現実に戻ってしまう。
こんなうつろいは、カメラではなく人の心で撮ってそっとしまっておきたいと少し悟りの境地である。
どこにでもあった庭は悲しいかな非日常になりつつあるのだ。