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Monthly Web Magazine Dec. 2016

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■ 奈良の玄  野崎順次

は奈良で最も美味しいとされるお蕎麦屋さんである。毎年、ミシュラン一つ星に格付けされている。

ユーミン、市川海老蔵、堂本剛など有名人のお気に入りである。特にユーミンは、「最後の晩餐」というアンケートで、死ぬ前に最後に食べたいのは玄の蕎麦と答えたという。ただごとではない。

玄のことを知ったのは、ほんの2〜3ヶ月前である。奈良町の東の方にいいお蕎麦屋さんがあると、何かで知った。ネットで調べたら、玄のことらしい。

小さな店で予約が難しそうだったので、ほぼあきらめた。いくら美味しくても、行列して待ったり、何週間、何か月前から予約するなんて、「美学」ではないと思っていた。

これまで、食べ物で長期予約したのは、富雄駅前にあったスペイン料理「アコルドゥ」ぐらいである。

私は蕎麦が好きだが、食べ歩くほどではない。東北、関東、信州の名だたる蕎麦屋に行ったことはほとんどない。

信州では、中央西線から中央東線に乗り換える塩尻駅で、待合室のかき揚げ蕎麦を楽しみにしている程度である。

家人は味覚のレベルが高いと自負している。彼女によれば、今までのベストの蕎麦は三田市母子の「いまきた」である。特に香りがよかったという。私も同行したが、ひどい二日酔いだったので香りも味も記憶にない。

玄が「いまきた」を超えるかもわからないので、家人の誕生日祝いも兼ねて行ってみることにした。ウィークデイは無理だから土日だが、土曜日の昼しか営業していない。

11月初めころに11月26日(土)の予約を取ろうと電話をすると、「昼に打つ蕎麦は41枚で、既に売り切れです。ただし、当日、余分に打てば、予約を受けられます。当日の午前10時に可否を携帯にお電話します。」とのことだった。

 店の女性が本当に気の毒そうに一生懸命説明するので、納得した。そして、せいろ2枚、田舎1枚を仮予約した。

が、ひどい話である。我が家から玄まで最短でも1時間半かかる。その日の蕎麦にありつけるかどうか、待機するのも、不愉快である。「美学」では断じてない。

 が、納得した。そこまで云って「やっぱりあきまへん」とは云わんだろう。まあ、奈良に行くつもりで、駄目なら他の店(例えば、ミリアムのカレーとコーヒー)に行けばいいことだ。

玄があってもなくても、奈良はいつでも行きたい場所である。と、納得した。

 当日、午前9時47分に携帯が連絡があり、大丈夫で午後1時に入店してくれとのことだった。さすがにホッとした。

近鉄奈良に12時20分くらいに着いた。奈良町の町並みを楽しみながらゆっくり歩いた。

十輪院の前を西から東に通過して、そろそろ左に狭い道があるはずと思っていたら、家と家との間に幅僅か1mの道だった。

 近所の人に確認したら、「予約してますか」と尋ねられた。予約なしで来る客も多いのだろう。

その道の奥の右手に玄があった。清酒「春鹿」で名高い今西家の別邸として建てられた建物である。のれんをくぐって門に入り、玄関から靴を脱いであがる。

      

パンフレットと献立表。蕎麦はつなぎなし、いわゆる十割蕎麦だ。蕎麦の種類はせいろと田舎。そして食べ方として、①普通(つゆにつける、ワサビ付き))、②おろし(つゆに大根おろしを入れる)、③水たたきの梅(水、塩、梅をつけて蕎麦自体の味と香りを楽しむ)がある。

    

私たちが食したもの。春鹿のお酒は「超・辛口」と「かすみ酒」各1合、そば豆腐(うにのせ)1個、蕎麦三枚(せいろ、おろしせいろ、田舎各1枚)である。一言でいえば、上品で繊細な蕎麦である。次回は水たたきの梅蕎麦をぜひ試したい。

       

お座敷は広くなく、三十人足らずで満席となる。

  

家の中と庭の様子。こじんまりとして、落ち着いている。ここの蕎麦に似つかわしい。

          

玄の情報

奈良市福智院町23−20742-27-6868

昼 11:30〜13:00(蕎麦、ほぼ予約必須)夜 18:00〜21:00(蕎麦懐石、完全予約制)

定休日: 月曜日、日曜日(但し、土曜日は昼のみ)

カード: 不可