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JAPAN GEOGRAPHICMonthly Web Magazine Sep. 2017
■夏去りぬ・・・ハス(蓮)のあれこれ 中山辰夫
7月〜8月にはハスの花が次々と咲く光景が見られました。ハスの群生地だった烏丸半島では今年も2年前までの姿を見ることが出来ませんでした。
隣にある水生植物園の従来からあるハス園や睡蓮池(どちらも結構な規模ですが)だけではやはり物足りません。ボランテイアを募って植えられた100鉢のハスも見事な花を付けましたがカバーには至りません。
8月最後の土曜日にパラグアイオニバスに乗る催しが行われ、子供たちは夏休みの思い出にと喜んで参加し楽しみました。
そしてハスの花のシーズンが終わりました。
所で、ハスの花の命は4日間です。365日の内4日間だけ咲き、後は子孫を残すために水中で生き続けます。
早朝泥のベッドからグングン茎を伸ばして、まとった衣をほどくように花が開く姿は誠に清らかで、気品をも感じさせますが、ハスにとっては必死の時間といえます。
ツボミになる直前までは水中で、獰猛な刃のような強さをもったトゲで身を守りつつ成長し、ツボミとなって姿を現わします。
一日目
花を開くのはおよそ朝7時前頃まで、水上に抜き出た花柄にツボミをやや開けただけで9時ごろには閉じてしまいます。
二日目
花は椀型に開き見事な姿を見せます。色も鮮やかで輝くような美しさです。ピークは8時前後−ハスの花が最も美しくて香りを放ちます。
台状の花托にある雌しべは、かすかな香りを漂わせ黄色味を帯びて生気を感じさせます。
引き寄せられるようにミツバチが飛来し雌しべに向かいます。雄しべから花粉を運ばれ受粉が行われます。気温の上がる9時頃になるとミツバチは飛び去り、ハスも花びらを閉じます。 「虻蜂もそっちのけの蓮の花 一茶」
三日目
朝早めに咲き始める花は、椀型から次第に皿のように開いて行きます。花の直径は最大となり開閉を繰り返したために色あせ、雌しべも黒味を帯びてきます。
ミツバチはもうやってきません。受粉をしないので昼を過ぎてもハスの花は咲いています。夕刻前には花ビラが落ち始めます。
四日目
花ビラがバッサリ落ちると花托のみが残り実を成長させ、葉は様々な姿をして枯れて行き地上での役目を終えます。
次々と咲くハスに見惚れておりますが、一本一本のハスの花は見る時間によって見どころが違います。それぞれの花は短い時間に持ち前の華美さ・優美さを爆発させて、後は水中泥のベッドで生き残りのたたかいに全てを賭けます。生への執着力がとても強い植物であるとあらためて知りました。
弥生時代の遺跡から発見されたハスの実が発芽し、生き返って今の世に生き生きと咲いているという、神秘的な花、来年からは違った見方をしたいと遅まきながら思いました。
安藤広重 上野晩鐘
参考≪四季の花ごよみ より一部引用≫