JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Aug. 2018

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■   古希も過ぎていく  田中康平

記録破りの暑い夏が続くが今年の夏はちょっといいことがあった。

古希は数えで70才だから去年と思っていら、今年になって子供たちが古希のお祝いをやるという。数えという歳の数え方がもうすたれてしまっていて、何でも満というのが当世風のようだ。

老いては子に従えとお任せにしていると、記念の贈り物をまずは受け取ることになった。贈り物が何なのかは事前には明かしてくれなかったが、天神の指定された所で落ち合って向かった先は眼鏡屋だった。

Talexという高級な偏光サングラスをプレゼントするという。フレームもそれに合わせた高級感のあるヒンジレスのメタルフレームとなりレンズは度付きの遠近両用となって、価格は教えてはくれないものの、とても自分では買わないような代物となった。思いも及ばなかったが贈り物らしいというえばそうかもしれない。

3週間後にできてきて、かけてみると確かにどこへ出かけても決まるような感じがする。

車の運転も楽だ。暑い日差しの中でも気が休まる。いいものをもらった。

そのあと暫くして今度は国内にいる孫・子が集合して食事会までやってくれた。こんな機会でもないと皆が揃うこともなくて有難いばかりだが、もう70年も生きてしまったかという感慨がある。

夏目漱石は48才でなくなっているしあの髭の伊藤博文でも68才で亡くなっている、70年も生きれば十分と思うべきなのだろう。

それにしても 居並ぶ孫の顔を見ていると人類としての責務をささやかながら果たせたのかもしれないという思いがある。

古来稀れなり といわれた古希も過ぎていく、長く生きるのもこんなことがあると悪くもない、もう20年位は生きてみようか、暑い夏も冷房の効いた部屋でのんびりしながらそんなことを考えている。

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