JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Sep. 2018

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■ 暑い時は近所の散歩   田中康平

暑さが厳しいと出かける機会がどうしても減る。

運動不足解消と気晴らしに、近くの3つの溜池を巡る散歩コースを設定して、朝夕の涼しい時に気が向いたら散歩して回っている。

それぞれの池には野鳥の飛来もある。

毎回行く2番目の池ではバンが生息していて毎年何回か雛を孵す。

ほんの数日前また雛を孵した。

2羽の雛が親鳥の監視下で蓮の上を歩き回っている。

蓮の葉の上にいる分には猫の来襲も避けられて一応安全なようだ。

但しカラスなどの鳥からの攻撃には茂みに逃げ込むしかない。

この池で大体年に3回位にわたって毎回2−4羽の雛を孵すが池が満杯になることはない。

成鳥までに無事に育つのはなかなか難しいようだ。

ともかくバンの平均寿命は恐ろしく短いように見える。

雛はどれも必ずヒーヒーと鳴き続ける。

親がその居場所が解るようにそうさせているように見えるが、いつそんなことを教えたのだろうか。

どの池でも必ず雛が鳴いているのを見るとそのように元来仕組まれているようだ。

雛の時期に鳴くように遺伝子に書き込まれていてそうでない雛は生き残れなかったということだろう。

ここにもダーウイン進化が見て取れるようで面白い。

1番目の池にはカワセミがしばしば現れる。

以前は斜面に営巣しているようだったが公園故に人が近づくことがあるからだろうか、今は営巣している雰囲気はない。

これも代変わりしているようでいつのまにか若さのある鳥に変わっていたりする。

結果的にここには長い間1つがいのカワセミが居続けることになっているようだ。

代々引き継がれて池の風景の一部であり続ける。

カワセミのDNAにとってみれば永遠の命であることを感じてしまう。

3番目の池は蓮池になっていて毎年夏の朝は蓮の花が一面に花開いていたが今年はさっぱりでヨシやガマの茂みに交じってひっそり咲くくらいだ。

どうやら人によって池に放たれたミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)が繁殖して蓮を喰いちぎっているらしい。

茂みの中までは亀が入れずになんとか蓮が生き延びているという風情のようだ。

人間を含めた自然のサイクルの回っている様を見るようでなかなか面白い。

一巡りすると都会の中の自然の循環の現場が見れてそれぞれに興味深い。

出かけなくてもこれはと思う景観はあるようだ。

生きていることは何にせよ面白い。

写真は順に

1.最近生まれたバン雛 2.代変わりして居続けるカワセミ 3.ハス池の茂みに残るハス

   

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