Monthly Web Magazine Oct. 2018
■ 「絶景の紅葉」とは 瀧山幸伸
「絶景」と呼ぶと失望感満載の図書や番組を連想するので好きではないが、「絶景の紅葉」を自分なりに定義してみたい。
定義の方法論は自分流のもので、演繹的ではなく帰納的なものだ。要するに自分が調査した数多くの事例を分類整理評価して導き出す手法だ。
各地の紅葉スポットのリストのうち、評点が高いものは景観工学的にも評価が高くなっているが、景観工学が全ての要素を網羅しているわけではない。
簡単に言えば、五感に対する総合評価が高い場所が「絶景の紅葉」となる。
わかりやすい視覚で言えば、赤ばかりよりも緑や黄色が混じることで赤が際立つことが好ましい。空や水の青さ、水面のミラーイメージ、水や枝葉の揺らぎ。そして歴史的建造物などのシルエット。黒い岩肌の背景も紅葉を引き立てる。霧や太陽光や月の光、特に雲の動きで日向と日影が劇場照明のように切り替わる動き(シーケンス)があれば申し分ない。欲を言えば虹などが加わればさらに良い。夜は原色のライトアップよりもほの暗い灯火の揺らぎや月明りのほうが好ましい。人の動きや服装も視覚評価の重要ポイントだ。多くの人による動き、原色の服装、カメラマンの三脚などによる景観破壊は言うまでもない。
聴覚は、風にそよぐ枝葉の音、滝や川の水の音から鹿威しの音、鳥の声、寺社の鐘などだろう。逆に言えば、車や観光客などの人工的な騒音はマイナスとなる。
嗅覚は、特にブナやカエデなどの香り、秋の実が放つ香り、枯葉とキノコなどの香り、農作物の香りなどだろう。
触覚は、木や枝葉に触れられること、落ち葉を拾って色や形を楽しめること。
そして、桜と同じく極めつけは味覚だ。紅葉の天ぷら、栗、キノコ汁、秋蕎麦、栃餅など、秋の食を楽しみながら紅葉を愛でることの幸せは日本でなければ味わえない。
この定義で言えば、以下のような場所が上位に入る。
自然系の「絶景の紅葉」 大雪高原沼
赤黄緑の紅葉、遠景も近景もダイナミック、空と水の青と紅葉のミラー、水の揺れ、雲と光の動きなど、自然系の「絶景の紅葉」の代名詞としてふさわしいが、タイミングを合わせるのが難しく、行きにくいのが難点だ。
自然系と文化系が複合した「絶景の紅葉」 霊山
複合の紅葉は数多く、優劣は付けがたいが、観光客などによる人工騒音が少ない場所の例を挙げる。
霊山は阿武隈山地にある急峻な岩場で、古くからの修験の場。北畠氏の本拠となり数多くの伽藍が建ち栄えた史跡。
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