JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Dec. 2018

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■ 危険な滝行 瀧山幸伸

滝行と言っても白装束で滝にうたれることではなく、滝とその周囲を撮影すること。行者よろしく危険な滝に如何に近づくか、そしてその魅力を如何に伝えるかを目的としている。

魅力とは言っても美しさだけではない。世の中には「滝百選」があるが、自然景観を重視しており、文化面の評価が足りない。

滝は日本の文化と深く関わる源流崇拝(水分:みくまりと禊:みそぎ)のシンボルの一つだ。源流を制する者が流域全体を制してきて今日の自治体に直結するなど、水系は政治経済社会の暗黙のルールとして深くかかわっている。

Japan Geographic的には自らの基準で選定した滝百選があるべきで、恐る恐る取材を重ねている。

滝の恐ろしさは、第一に、転落による負傷や致死の恐怖。第二に、滝壺に転落したら渦巻に飲み込まれて浮上できないで溺死する恐怖だ。

幸いなことにまだこのような重篤な事態に至っておらず、この文章が書けている。

それらに比べればはるかに軽微な恐怖だが、第三に、滑る岩に足をすくわれて転倒し、負傷したり撮影機材を壊したりする恐怖だ。

第三の恐怖は何度も体験済で、滑って転んで傷を負ったり機材を壊したことがある。さらに、道中の悪路で車を壊すこともあった。

滝の取材はもう止めようと何度も思うが、目の前に美しい滝を見るとついつい近寄ってしまう。

落ち葉が多い晩秋は岩が良く滑る。けれど、危険な蛇などはいないし、葉が無いので見通しも良く、撮影には好都合だ。

そのうち第一第二の恐怖が襲ってくるのだろうか、あるいは別の理由で最期を迎えるのだろうか。いずれにせよ行者よろしく畳の上での最期にはなりそうにない。

今年のベスト、桃洞の滝でもやはり滑った。

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