JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine May 2019

 
■  「池島慕情 猫編」 柚原君子

長崎の大村湾の西側に西彼杵半島(にしそのぎはんとう・西彼半島(せいひはんとう)ともよばれます)がありますが、その西沖合およそ7キロ(船で10分)に浮かぶ島「池島」があります。昭和の半ば頃に海底を掘削する炭鉱で栄えた島で、最盛期に島民は7700人いたそうですが、2001年に閉鉱。現在は廃墟と化した中層マンション住宅が連なり、入鉱の線路はさび付き、機材は海風にさらされて崩れ落ちそうになっています。軍艦島に似た状況ですが池島は住民の方130人95世帯が居住されていますので猫も多く、猫と廃墟の絵を撮りたくて行ってきました。猫は主に港の近くと山の中腹にある島に一軒しかない食堂の周囲にいるようです。公式の案内では300匹とありましたが見た限りでは40匹くらいでした。それでもおもしろい絵が撮れましたので、ウエブマガジンで紹介したいと思います。

1,周囲はこんな感じ。廃墟になっているマンション群。草も多く、マンションの窓は破れたり、生活用品が残っているのが見える部屋もあります。人の住んでいた気配ももはや消えています。

   

2,猫が食堂の前で群れていました。するとある一匹が足伸ばししています。どこかに出掛けるんだな、と猫好きの私はすぐに分りました。追跡してみようっと。

 

3,足を先に延ばしたのは雌のようです。すると横にいた雄も足を伸ばしました。えっ!二人で行くの?さ、誘われたの?

 

4,誘われたからには行かねばな、と雄はさらに入念な(入念すぎるぞ!)足伸ばし……顔は見えませんが鼻の下も伸びている感じがします(笑)

   

5,雌先導で出発。ふ〜ん……今風でっか。

 

6,雌のしっぽがピーンと立っています。ご機嫌な証拠。雄のしっぽは和猫お団子風なので分りませんが、二匹で時にはくっつきながら猫特有のウォーキングで出発。どこに行くんだろう……

           

7,「オットト……こっちじゃない」

「だろ!そっちじゃないだろう!」

なんともネ、寄り添い方が良い感じ。ラブラブって感じ。パシャパシャと何枚も写真を撮っていたら

    

8,フライデーさん?フォーカスするなら事務所通して!……なんて言ってないでしょうけれども。二匹そろって振り返りました。

 

9,その後もクネクネしながら仲良し歩き。しかし、こんなにラブラブっぽい猫のペアーを見たのは初めてです。

          

10,まだついてくるよ、あの人間!って、再び振り返る雄猫。

 

11,ほっておきなさい!と雌は人間を気にもせずにゆったりと歩きます。雄も付いていきます。角を曲がります。行く場所が決まっていて歩いている感じです。曲がる直前で今度は雌が振り返る。雄よりも結構厳しい表情。

      

12,曲がった方の道をどんどん進んでいくので、私はどんな顔をしているのかと撮りたくなって猫ペアーを追い抜いて前に!

       

13、と、まあこんなデレデレな顔デシタ。

       

14,何枚か撮らせてもらったら、今度は雄猫が結構厳しい顔になってニャー。もういいでしょ!って感じ。

     

15,ねぇ、私たちの家を新築そっくりさんにしたっていったじゃない。どうなっているか楽しみ!どの草道だった?と雌猫。確かこの3本目のこっち……あっここここ!と雄猫。出発と同様に雌猫主導で、至極当たり前に茂みの中に仲良く消えていった猫たちでした。

      

16,人の恋路を邪魔する奴は……と昔から言いますので、ここで撤退。先ほどの角まで戻るとなんと一匹の猫がお行儀よく座っていました。私は思わずその猫に声を掛けてしまった「おまえは本妻?前妻?不倫相手?それとも文春のまわし者?」

猫は黙って草道の方を見ていました。池島に5月の海風が吹いていました。

 

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