Monthly Web Magazine July 2019
■ カムイワッカの湯滝 瀧山幸伸
カムイワッカの湯滝を知ったのは学生時代だった。当時の観光系山岳系雑誌では秘境中の秘境湯というお決まりのキャッチフレーズだった。
世に言う「百選」なるものには納得がいかないものが多い。選定方法(主体、基準、委員等)が異なれば結果が大幅に異なるのだからやむを得ないことだが。
滝百選にしてもしかり。カムイワッカの湯滝は百選には選ばれていない。
もしJapan Geographicが滝百選を選ぶとしたら、地理地学生物学的価値、景観工学的価値、文化的価値を考慮した選定としたい。
その点では、カムイワッカの湯滝の学術的価値は非常に高い。
単に温泉の滝というだけでは国内外に数か所著名なものがある。
それだけではなく、1936年に硫黄山から噴出した溶融硫黄が川を埋め尽くしたという世界的に貴重な火山活動の現象があった滝だということだ。
詳しくは滝のページに掲載したネイチャーセンターの論文パネルを参照していただきたいが、今でも硫黄成分の影響で海面がエメラルドグリーンに変色している。
現在の滝の温泉成分はそれほどではないが、硫黄分が多くよく滑るので靴か靴下を履いて登る必要がある。
温泉とは言っても温度が低く、滝つぼに入っている人はみかけないが、ぬる湯好きの自分には最高の露天風呂だった。
火口原など危険地帯にあるワイルドな湯がどんどん立ち入り禁止になっている中、ここの滝はまだ立ち入りも入浴もOKだ。管理者の見識に敬意を表したい。
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