JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine July 2019

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■ 蝶がレモンに卵を産んで  田中康平

レモンの種からレモンの木を育てようとしているが一向に育たないこともあって、少し育ったレモンの木を買い求めて鉢にして玄関わきに置いている。

自家製のレモンをちぎって食べたい、ただそれだけのことだ。

6月上旬頃にしきりにアゲハ蝶(正確にはナミアゲハ)がレモンの木のあたりを訪れるようになって、何をしているのだろうとよく見ると産卵しているようだ。

昨年もそういえば種から育てていた小さなレモンの木に卵を産み付けられて、孵った幼虫にレモンの木が食いつくされた記憶がある。

可哀そうだが卵は見つけ次第空いている小鉢に移すことにした。何個もみつけて小鉢に入れておいたらその内これが孵って黒い小さな幼虫が現れだした。

始めはレモンの木の葉を少しちぎって与えたが、これでは持ちこたえられそうにないと庭に大きく枝を広げているキズ(木酢)の木の若葉をちぎって与えることにした。これならほぼ同じ柑橘類で葉は十分に供給できる。

幼虫の方は直ぐに死んだのもあるようで結局4匹が育っていった。ネットで調べると脱皮を繰り返して成長するとある。

半月もすると次々に脱皮を繰り返したのか最初は1−2mmくらいだったものが虫らしくなって遂には最も早く育った一匹が黄緑色の芋虫になった。

5齢幼虫と呼ぶらしい。面白い顔をしているが目のように見えるのは模様に過ぎなくて目は別にあるらしい。

この頃になると葉の供給も忙しくなる。残りの3匹も順次緑色の芋虫になっていったが一番発達の遅れたのはそのうち動きが鈍くなり見えなくなってしまった。生き残るのは容易ではないようだ。

最も早く育った幼虫はいや増しに大きくなりそろそろ蛹にと思っていたら突然ぷっつりと姿が見えなくなった。小鉢から這い出してどこかへ蛹になりに行ったのだろうか。辺りを探しても見つからずどうもよく分からないがそうなのだろう。鉢に残ったのは2匹の緑色の幼虫でこれを見逃さないように育てれば分かるかもしれない。今日のところはここまでだ。これからまだ少しは楽しめそうだ。

命の循環が目の前で繰り広げられていく様は面白い、飽きないものがある。

小さな鉢の中でもどこにでも自然の匠はその力を存分に見せてくれる、人はこれを自ら作り出せるまでになるのだろうか。とんでもなく遠い未来になるか、決してできないか、いずれかだろう。

何という世界に我々は生きているのだろう、そう思ってしまう日々が過ぎていく。

(写真は順に:1.ナミアゲハの産卵行動、2.レモンの木に産み付けられた卵、3.小さな苗木のレモンにも卵、4.孵った幼虫、5.次第に育つ幼虫、6.最初の5齢幼虫 7.大きくなった5齢幼虫 、8.残った2匹の5齢幼虫 )

        

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