JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Sep. 2019


■  今、バスケットについて語ろう 野崎順次

中学校から大学までずっとバスケット部だった。高校3年の時には県大会で優勝し、インターハイでは準々決勝(ベスト8)までいった。社会人になってからは、友人の作った実業団チーム(大阪)に誘われ、15年くらいプレイした。

横浜在住の孫二人がミニバスケットボールに所属したので、たまに試合を見に行く。また、NBAの八村塁、渡邊雄太の参加により日本チームの成長が著しい。現在の日本チームには入っていないが、小柄な富樫勇樹のプレイが好きである。

そこで、かねてより、バスケットボール(以下バスケット)に考えていたことをまとめてみた。

サッカーやラグビーは地面の上で行う自然発生的な競技といえるが、バスケットは1891年にアメリカのマサーチュ−セッツ州で一人の人物、ジェームズ・ネイスミスによって考案された。世界最初の試合に18人が参加したが、その内の一人は日本人だった。石川源三郎(1866−1956)という人で、奇しくも、その親戚の方(やはり石川さんで非常に紳士的)が私の生家の斜め向かいに住んでいた。

基本的にバスケットは体育館の板の間の上で行う。地面と違って、板の間では滑ったりずれたりせず、ピタリと止まれるので、足首、膝、腰にかかる負担が大きい。サッカーやラグビーはかなり高齢になっても続ける人があるが、バスケットは少ない。中年になって久しぶりにOB戦に出場し、速攻で走りながら振り返った瞬間にアキレス腱を切ったという話を聞いた。

バスケットの得点は高さ10フィート(3.05m)のリングにボールを入れるのだから、背が高いのが絶対に有利である。ショットだけでなく、リバウンド、パスなど基本的なプレイは背が高い方が容易である。強いチームを作るにはでかいプレーヤーを集めるのが一番である。これは非常に単純で不公平な原則であるが、仕方がない。

とにかくショットが入れば得点になる。それも遠ければ3点ショットというアドバンテージがある。ここに背の低い人の活路がある。遠いショットは単純な動作なので、正しく教えてやれば、ほぼ誰でも、90%以上入る。高校の頃、練習の終わりに全員がディフェンス無しのショット練習をした。遠い距離で今でいう3点ショットである。100本打って90本以上入るのが普通だった。

昔に比べてボールのハンドリングがよくなったので、プロもアマもドリブルが上手になった。一人のガードがドリブルでボール運びをするのをよく見るが、ドリブルよりもパスの方が早いことを忘れてはならない。ドリブルテクニックに夢中になって、前方にパスするチャンスを逃すのは愚の骨頂である。NBAの試合を見ていると、ひとりでドリブルし過ぎないようにしつけられているのがよく解る。

ミニバスケや中学生レベルの試合を見て一番感じるのは、どちらの手でもほぼ同じくドリブルできる選手が少ないことである。右利きで左手を使うのが苦手な場合は、ドライブインしてくるのは利き腕の方だからコースを読みやすい。私の従兄も学生時代にバスケをしていたが、右利きなので、両手が使えるように、トイレでお尻を拭くのも左手を使うようにしていた。

それから、不親切なバスが多いように思える。片手で投げやりなパスは捕りにくいしショットのタイミングが乱される。状況が許す限り、両手で相手の胸のあたりに床と平行な直線のパスをする。矢のようなパスである。筋力と安定性が向上すれば、片手で正確なパスができるようになる。また、プレイの上で不可欠であれば、山なりのループパスも必要になる。

古い話をすれば、私が学生の頃(50−60年前)、バスケットは頭脳的なスポーツだといわれた。ファール判定が厳格だったのでスクリーンプレイがもっと有効だったし、試合の流れを有利に運ぶため緩急自在に攻め方を変化させたり、多種多様のフェイクで身長差をカバーした。あまり大きな声では言えないが、事実、バスケット部員の学業成績は他の運動部に比べてよかった記憶がある。それが今では、巨人のぶつかり合う「パワープレイ」になっている。時代の変遷というべきか。

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