JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Sep. 2019

Back number このように素晴らしい環境が残っていることに感謝したい。


■山里の伝統行事  大野木康夫

8月24日に行われた久多の花笠踊を見に行きました。

久多は京都市左京区のほぼ北端、安曇川支流の久多川流域に位置する山里で、住民基本台帳人口では7月現在で92人、65歳以上の人口比は45.7%を占めます。

市内中心部に行くには一旦大津市の葛川に出て国道367号線で花折峠、大原、八瀬を通っていく方が能見峠、花脊を通っていくよりもはるかに速く着きます。

冬は積雪がすごく、昔、職場の同僚(故人)の家が久多で民宿をしていて、クリスマスに泊まって翌日出勤するとき、前日まで雪がなかったのに一晩で車のボンネットを越すくらいの雪が積もったことがありました。(同僚は何事もなかったように車で送ってくれとので、出勤時間には余裕で間に合いました。)

また、就職直後の研修で、久多の大黒谷キャンプ場に泊まって間伐材でベンチを作ったときも、4月なのに夜は雪がちらついて震え上がった記憶があります。

当日、昼間は晴れていたのですが、午後5時頃に国道から久多方面に向かった頃には雨が落ちてきて、志古淵神社に着いた頃にはけっこうしっかりした雨が降りだしました。

社務所には保存会の方が詰めておられて、やぐらやスピーカーの準備は終わっていました。

花笠踊は午後8時に志古淵神社から1.5km北の上の宮神社で始まるということでしたが、途中の中の町の花宿に寄って花笠を撮影させていただきました。

 

その後、上の宮神社で待っていたのですが、雨のため、上の宮神社と大川神社での奉納は中止となり、9時から志古淵神社で始めるということになりました。今年の取材は天候に恵まれません。

拝殿に並べられる花笠

本殿に参拝する神殿(こうどの)

先立って行われる盆踊り

旧愛宕郡(おたきぐん)に広く分布する「てっせん」に似た古い形式の盆踊唄ですが、録音でした。

 

神殿がすべての花笠を本殿に供えます。

花笠を返された参加者は、鳥居の近くに集合します。

棒を持っているのは「より棒」で、踊りの開始に際して棒を打ち合います。花笠を見せてもらった中の町の人です。

花笠踊が始まりました。

花笠はろうそくの灯が入った紙製の灯籠形式のもので、かつては少年がかぶって踊っていたようですが、近年では大人が手に盛って踊るようになっています。

歌い手が歌う七曲の歌に合わせて花笠を振ったり腰をかがめたりして踊りますが、油断すると花笠が燃えてしまうので、難しいようです。

始めは歌い手の後ろで並んで踊り、神殿の挨拶の後は、やぐらの周りを回って踊ります。

踊り手には少年も交じっており、次世代への継承に向けた取り組みもなされているように感じました。

    

踊りが終わったのが10時30分過ぎ、車で家に帰ったら12時前になっていましたので、雨が降らずに予定どおりなら日付を越えていたと思います。

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