JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Oct. 2019

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■  青森と弘前 野崎順次

9月に札幌に出張し、行きは飛行機で、帰りは週末になるので、JRを乗り継いで、青森と弘前に寄った。その折に気がついたり、感じたことである。

 

9月13日(金)に青森のホテルに泊まったが、部屋が13階の13号室だった。特に縁起の悪いことは起こらなかったが、翌朝、あれほど気をつけていたのに、読みかけの文庫本2冊を忘れた。

 

JR青森駅は県庁所在都市の主要駅であるのに、エレベーターはなく、プラットフォームとコンコースの間は階段と片道エスカレーター(通常上り)しかない。重い荷物があっても階段を降りなければならない。また、JR青森駅も含めて(ということはあらゆる交通機関で)SUICAやICOCAが使えない。

青森と弘前という北東北の重要都市を結ぶ公共交通機関はJRだけである。1時間での本数は平均的に僅か2本である。バスがありそうなものだが、直行ルートはなく、青森空港経由になる。両都市から空港へのバスはおおむね1時間に1本である。

岩木山はいい山である。青森県で一番高く、円錐形の成層火山で山頂は三つの峰に分かれ、左右対称でないところが味わい深い。太宰治はその山容を「十二単を拡げたようで、透き通るくらいに嬋娟たる美女」と喩えている。青森のホテルから、弘前に向かうJR列車から、弘前のホテルから、遠望した。

      

屋根の話である。積雪地なので、塗装鉄板の屋根が多く、雪を速やかに地上に落としたり、落とさず屋根に溜めて融かしたり、つららができないように庇や小屋根を省略したり、それぞれに機能に応じていろいろな屋根がある。倉敷や奈良で高台から見る甍の波とは全く違う。白樺の林の中にちらほらとあるとよさそうだが、青森や弘前などで密集しているのを見ると、関西人としては、興ざめであるが、積雪地なのだから、仕方がない。雪に対処するのは命がけであるそうだ。

    

津軽尾上駅から盛美園に歩く途中で、歩道のすぐ横にリンゴの木があり、半ば赤くなった実がなっていた。柵もないし、ちょうど胸の高さだった。それはさておき、昔、信州上諏訪の町中で、ある施設の生け垣がリンゴだった。取って食べたがなかなかであった。

  

弘前のタクシーの運転手さんと当地の名物について話した。やっぱりリンゴかなあというと、運転手さんは子供の頃から嫌ほどリンゴを食べてきたので、食べ飽きたそうだ。ミカンくらいが食べやすくていいそうだ。ほなやっぱり弘前城の桜かと聞くと、毎年見てるが、いつも非常にきれいで見飽きないと絶賛していた。

津軽尾上の盛美園のちかくで家の庭の秋明菊が満開だった。関西に比べて半月から1ヶ月くらい早いようだ。秋桜も咲いていた。彼岸花は見なかったが、ひょっとしたら、この三つの花の開花期は同じかもしれないと思った。

 

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