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Monthly Web Magazine Feb. 2020

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■ 日本最古最美の石仏 - 石位寺三尊石仏 野崎順次

奈良県桜井市忍坂に石位寺という無住のお寺があり、日本で最も古くて美しい伝薬師三尊石仏が伝えられている。

(おそらく明治初めの廃仏毀釈により)寺の庭に転がっていたようだが、大正5年(1916)に関野貞東京帝大教授が白鳳時代(644-710)と鑑定し、国宝(現重要文化財)に指定され、堂内に安置された。私は、42年くらい前に石仏の本で知った。清水俊明著「大和の石仏」(昭和49年)と川勝政太郎著「石造美術の旅」(昭和48年)である。前者では表紙の写真にまでなっており、また後者の中の「石位寺と談山神社」の章は「日本中でいちばん古くて、いちばん美しい石仏は石位寺の三尊石仏である。」という文で始まる。

   

昭和53年の秋、これらの本に触発されて、家族の遠足で桜井に行った。子供3人は5~10歳と小さいが、赤坂天王山古墳(長大な石室)、石位寺、舞谷2号墳(磚槨式石室の長方墳)、聖林寺(国宝十一面観音像)というなかなか渋いコースである。その時の写真を見ると、三尊石仏は写っていないが、お寺の収納庫の横でお弁当を食べているようだ。この時確かに拝観して心を打たれた記憶があるのだが、写真撮影禁止だったのか。あるいはすでに非公開になっていて、現地で写真を見ただけだったのかも知れない。

  

他の石仏の写真があった。

  

この頃から石位寺は無住となり、三尊石仏は秘仏として非公開となった。平成22年(2010)に寺を管理する地元住民の方々が一般公開することを決め、桜井市を通じて予約拝観できるようになった。平成27年(2015)9月27日、桜井市役所から忍坂の森本さんをご紹介してもらって拝観した。大宇陀に向かう街道から高みに上がると、堂宇がある。

   

御本尊の写真撮影はできないが、事務所には写真、絵画などが展示されていた。

    

そして、最近、三尊石仏と偶然再会できた。東京国立博物館の出雲と大和博(令和2年1月15日―3月8日)である。昨年11月に出雲大社に行ったのだが、古代出雲歴史博物館が工事のため休館中だった。残念と思っていたら、大量の国宝青銅器などが東京に搬送されていた。その会場にすっかりきれいになった三尊石仏がライトを浴びて輝いておられた。去年(平成31年)4月に奈良に搬送して、美術院国宝修理所奈良国立博物館工房で修理保存処理。そして、東京に搬送されたそうだ。

石位寺の由来や、三尊石仏の保存状態がよい理由は、興味深いテーマである。これらについては後日まとめてみたい。

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