Monthly Web Magazine May 2020
■「言葉のあぶく」その6 野崎順次
20年くらい前から、おもしろかった話や、ふと思いついたことをメモしています。
ラブホテルの名前で、「ホテル・ジェラシー」というのをどこかで見かけた。想像力をかきたてる良いネーミングだと思った。どこだったかなとネットで調べると、大阪今里に激安ホテル、「ダブルジェラシー」というのがあり、アクセス抜群、コスパ最高、焼肉の聖地'鶴橋'からスグ!と唱えていた。これとは違う。「ダブル」抜きのはどこだったかなあ。
2018年にロンドンに行った時、ベンチに座るジーパンの白人女性が、飲みかけのジュースの缶を膝に挟んでスマホで話しているのを見た。ただそれだけだが、センスがいいと感じた。
四国に行った時、JR車内で、隣のクロスシートに座った中年姉妹二人が興奮気味に声高でしゃべっていた。父親の葬式の帰りのようで、父親がアトリエに数千万円隠していて、その鍵の在処を知っているという話題である。すごい話である。悪い奴が聞いていて、二人を捕まえ拷問したらどーすんねんと思った。数千万円ならそうする価値がありそう。
友人は酒好きで家に一升瓶が多数ある。飲みかけの瓶の中身が少なくなると、奥さんが「明日はビン出す日やから、はよ飲んでしもて。」と急かされるとか。
エレベーターの中で独りごとを言っている変な男がいた。彼が降りてから、偶然一緒に乗っていたおばさんに「変な人ですねえ。」というと、無視して答えてもらえなかったので、こちらも独りごとになってしまった。
港町尾道のパン屋さんの店名が「パン屋航路」。もちろん志賀直哉の「暗夜行路」のもじりである。
スエーデン人らしき色っぽい女を見かけて、「スエデン食わぬは男の恥」という言葉が浮かんだ。
石造物の五輪塔の英訳に適当なものはないかと、ネットで調べていたら、「Olympic Tower」というのがあったので驚いた。
昔、フィンランドに出張して、第二の都市、タンペレで滞在した。ホテルの近くの酒場に行った時、たどたどしい英語で話しかけてきたおじさんが、「私は水夫で横浜に行ったことがある。横浜のケイコを知っているか」と聞かれた。
マイケル・Z・リューイン作「季節の終り」はハードボイルドの傑作である。その中に出てくるクラブの経営者は、若い歌手に酒の関係のある芸名をつける。割と人気が出たのに、ディジー・ワインズやジニー・トニックがあり、芽が出なかったのにピンク・レディがある。
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