Monthly Web Magazine June 2020
■『春告げ鳥』を追いかけて 酒井英樹
別名を『春告げ鳥』とよばれるウグイス(鶯 Horornis diphone)は平地にて鳴き始める季節が早春であることから来ている。
春分の日の3月20日、わが家の近くでも『春告げ鳥』の初鳴きがあった。
春を告げるには些か遅いと感じて調べてみると、気象庁が生物季節観測している京都は2日後の22日、平年に比べ3週間ほど遅かったようだ。
初鳴きの日以降、歌声を競うかのように(実際はオス同士の縄張り争いや求愛のため)囀る彼ら、しかし英語名Japanese Bush
Warblerのとおり声は聞こえど・・姿は薮の中で見えず・・。
日本人なら誰でも知っている「ホーホケキョ」のウグイスの囀り。
だが、ウグイスの姿を正確に認識している日本人はどれほどいるだろうか??
花札の2月の図柄は「梅にウグイス」と広く認識されている。
しかし、ウグイスは雑食性の留鳥で、昆虫類や冬季は木の実を食べる。
梅の木にとまって花の蜜を食すことはまずないという。
梅の花に群がる綺麗な薄緑色の鳥は比較的警戒心が緩く群れで行動するメジロがほとんどだそうだ。
ちなみに日本画の場合は、「梅にメジロ」の画材がほとんどだそうだ。
メジロ(Zosterops japonicus)
静岡県富士宮市 富士山本宮浅間神社の境内にて 令和二年(2020)3月撮影
ちなみに、メジロの写真や詳細はWeb-magazine 2020年3月 田中康平さんの『メジロが多い』を・・
幼少のころに籠飼のウグイスを眺めて以来、その姿をきっちり認識したことがなく、知識として知っていただけの・・
そして、
今まで鳥達・・といっても『動かない鳥』を撮影してきたわが身としては・・・囀る姿を撮ろうと一念発起、4月以降仕事の合間を見付けて毎日鶯を追いかけてみた。
京都市 北野天満宮 本殿 中備(蟇股) ウグイス
撮影を始めてしばらくは空振りが続いた。ウグイスは警戒心が強く、英語名Japanese Bush
Warbler(藪でさえずる鳥)のとおり薮に隠れていることが多い。
35ミリ換算で3000mmの望遠レンズを用いてなるべく遠くから撮影を試みるも、腕の未熟さから失敗の連続・・。
しかし、数日観察するにつれ判ってきたのが、警戒心の個体差があるようだ。
周りを気にせずヨシの上端に留まり盛んに囀り続ける1個体を発見し、この片足で囀る(勝手に「ジョニー」と名付けた)雄の個体を中心に1か月間半追い続けた。
ウグイスの「ホーホケキョ(法、法華経)」と念仏を唱えているかのごとく囀るこから広まったようだ。
しかし聞き方を変えれば「ウィー、ギュウ・ウィス」とも聞こえなくもない。この独特の囀りがウグイスの和名の語源となったという説もある。
《動画》
また、ウグイスにはこれとは別に「ケキョケキョケキョ・・」(動画では4分頃)と囀ることがある。
この囀りは『ウグイスの谷渡』と呼ばれている。
ウグイスはこの二つの囀りを使い分けて、仲間に意思を伝達しているとされる。
「ホーホケキョ」は縄張り宣言であり、また、巣にエサを運ぶメスに対する「縄張り内に危険なし」の合図でもあるそうだ。
「ケキョケキョケキョ」が侵入した者や外敵への威嚇であるとされている。
同時にメスは自身の安全のためと、外敵に巣の位置を知られないようにするために メスに身をひそめるよう警告しているそうだ。
GWも過ぎた頃、観察も1か月過ぎたあたりで、ジョニーは突然姿を見せなくなった。
囀りは相変わらず盛んに響いているが・・新緑の葉に姿を隠しているのを数度見かけただけ。
彼も盛んに囀った結果、良き伴侶を得て巣ごもり、子育て(ウグイスのオスは給餌はしないとされる)を始めたのだろう・・。
残念ながら姿を見せなくなったのは・・警戒心が強くなったのは、そのためだろう・・。
メスや子供を守るため、晩夏までは囀り続けるであろう・・たとえ姿が見えなくても・・心地よい囀りは耳を楽しませてくれる・・
そして、ぜひ命を繋いで来年以降も変わりなく囀り続けてくれることを期待したい。
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