JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine June 2020

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■アゲハチョウの幼虫が  田中康平

春過ぎて夏に向かうこの季節は虫や鳥の繁殖行動を見るのが楽しい。鳥は スズメの若鳥が一斉に飛び出すようになって遊んでばかりで仕草が一々面白い。
虫は今は玄関先のポッドの中でナミアゲハやナガサキアゲハの幼虫を育てている。
ナガサキアゲハは、去年の秋この庭で寿命を終える個体を見たが、栃木にいた時は見かけた記憶がない、南から生息範囲を広げている蝶の様だ。日本に生息する蝶のうちでは最大と言われている大きな黒いアゲハだ、ともかく見ごたえがある。
今年の春に如何にも羽化したばかりという風情の初々しいナガサキアゲハがゆったりと休んでいるのを庭で見た。この辺りのミカンの木で育ったのだろうか、或いは自宅のキズ(木酢)の木で育っていたのかもしれない。
その内玄関先の鉢植えのレモンの葉が虫に食われ出したので、見るとアゲハ蝶の幼虫が3匹もいる。急いで幼虫を育てるための別のポッドに移し同じ柑橘類であるキズの葉を与えて見始める。裏庭にはキズの4m位の立派な木があって葉の供給には問題がない。
幼虫の1匹は少し緑がかっていて他のと違う、ネットで調べて見るとこれはナガサキアゲハの幼虫で他の2匹は普通のナミアゲハの様だ。アゲハの幼虫は卵から孵ったばかりの幼虫が1齢幼虫で4回脱皮して終齢幼虫である5齢幼虫(青虫)まで育ち、それから蛹になる。ここ数年夏の間何度か育ててみたが全て終齢幼虫になった後 育ったポッドを抜け出し蛹になるべくいずこかへ去って消えてしまう、蛹の場所は探しても見つけることができなかった。
ナガサキアゲハの幼虫はナミアゲハの1.5~2倍くらいある感じで日増しに大きくなっていくので、ポッドも別にして育てる。ナミアゲハの方が先に終齢幼虫になってさあどうなるかと注意していたが、また1匹が消えてしまって行き先が分からない。次の日残った1匹の様子が如何にも遁走しそうな雰囲気になって注意していたが少し離れたすきに逃げ出してしまった。遠くにはまだ行くまいと探すとこれは見つかって玄関の壁の柱を着々と上っていく。暫く上ってオーバーハングになったところを乗り越えようとして何と落下してしまった。2m位墜ちたがまた気を取り直して壁を登りなおし始めた、今度は表札を越えて庇のところまできてここであきらめるかと思えば更に庇を逆に下って遂に庇の瓦と屋根の隙間に消えていった。うまく羽化できるだろうかと気になるが、それにしても随分な移動だ、ここまでやるかとも思ってしまう。蛹はまた見れずに残念と思っていたら最初に逃げた幼虫が大分離れた壁に前蛹となっているのが見つかり、翌日には蛹になった、初めて見れた。このまま8日後に羽化できるかこれが楽しみだ。一方のナガサキアゲハの方はやっと終齢幼虫になってバリバリと葉を食べまくっている、とにかく大きい。こちらもそろそろ逃げ出す時期だがっどうなるか、気の抜けない日々となる。

コロナで出かけることがなくなっても、自宅の庭に展開される命の循環は見て飽きない、暫くは楽しめそうだ。

写真は順に 1.庭に今年現れたナガサキハゲハ成虫 2.ナミアゲハ幼虫(2齢くらい)、3.ナミアゲハ終齢(5齢)幼虫、4.ナガサキアゲハ4齢幼虫、5.蛹になる場所を求めて彷徨うナミアゲハ終齢幼虫--表札の上まで登った、6.ナミアゲハ前蛹(ぜんよう)、7.ナミアゲハ蛹、8.ナガサキアゲハ終齢幼虫

        

 

 

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