Monthly Web Magazine Dec. 2020
■ 記憶のタイムカプセル~半世紀ぶりの訪問~ 酒井英樹
令和2年もあと1か月になった・・本来なら東京オリンピックも開かれ盛り上がったであろう・・この年・・。
2020年最後の最後のWEB-MAGAZINEの題材は、
母のお中で迎えただけで映像でしか知らない・・前回の東京オリンピック・・
ではなく・・大阪で生まれた自分にとって・・ちょうど50年前に開催された国家イベントの「大阪万博 EXPO'70」を選んだ。
大阪万博EXPO'70は大阪北部の千里で開かれたアジア最初の国際博覧会(万博)。
現在は、その跡地は万博記念公園として残されている・・。
WEB-MAGAZINE 2020 8月号で紹介した大阪の南のシンボルの1つ「づぼらやのフグ提灯」(現在は撤去されています)・・。
しかし、大阪全体で言えばやはり「大阪城天守」とEXPO70のシンボルともいえる「太陽の塔」の2つが追加される。
そしてちょうど今年、大阪万博EXPO'70の50周年を記念してか・・「太陽の塔」が登録文化財(建造後50年以上の建造物が対象)に登録された。
太陽の塔
大阪から西に中国自動車道を通ると必ず見える太陽の塔は、岡本太郎がデザインした高さ71mの鉄骨・鉄筋コンクリート製の巨大オブジェ・・。
未来を象徴する頂部の「黄金の顔」、現在を象徴する正面の「太陽の顔」と過去を象徴する背面の「黒い太陽」の3つの顔を持つ。
黄金の顔
ステンレス製(当初は鋼製、修復時に耐久性からステンレスに)
直径10.6m
太陽の顔
繊維強化プラスティックの下地と発泡ウレタン、コンクリート吹き付け、樹脂塗装の表面仕上げ
直径約12m
黒い太陽
黒色陶器(信楽焼)タイル貼付
直径約8m
誰もが一度は見たことがあるはず・・、しかし内部は???・・ほとんど知られていない。
それもそのはず・・大阪万博EXPO'70で公開されてから50年近く非公開であった。
内部の展示物「生命の樹」は全く手つかずのまま朽ち果てていたが、近年復元が完了し公開されたので50年ぶりに太陽の塔を訪れた。
入口に入ってしばらくすると第4の顔といわれる「地底の顔」が出迎える。
地底の顔
直径約3m
大阪万博EXPO'70終了後撤去され、オリジナルは現在も行方不明。
内部公開にあたり、当時の資料より復元
そして階段を上ると高さ41mの「生命の樹」の根元に・・。
カラフルな原色の樹の幹や枝に数多くの生物模型が取りつけられ、アメーバーなどの原生生物からハ虫類、恐竜、哺乳類・・古代から人類誕生までの生命の進化の過程をあらわしている。
生命の樹
残念ながら写真撮影は1階のみの許可
「生命の樹」を見ていて既視感はあった・・50年前・・記憶では亡き父に連れられ入った覚えがあるが・・何か違和感があった。
当時若干5歳の子供が階段を上ってみたのだろうかという疑問・・しかし今回上るにつれ・・当時の記憶がよみがえってくる・・
当時は「エスカレーター」で昇って・・太陽の手から出るようになっていたことを思い出しその景色が目の前に現れた。
エスカレーターで空洞の手から大屋根に出るようになっていた。
そういえば大阪城の地下に大阪万博EXPO'70を記念して5千年後に開けるタイムカプセルが埋設されている。
私にとって今回の太陽の塔の内部訪問は、時と共に次第に薄れていっていた50年前の記憶をよみがえらせるタイムカプセルそのものであった。
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