JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine August 2021

Back number


■ 近くの鳥を見ながらコロナをやり過ごす 田中康平


コロナで殆んど遠出しない日々になっている。
福岡市の住宅地に在住していて出かけるといっても近くで鳥を見るくらいしかないが、夏も暑さの盛りではこれも限られている。しかし鳥を含む野生の状況は毎年少しづつ変わってきていて、近くでも見れる範囲で継続してみているとそれなりに面白い。
今年は例えば近所のため池公園で毎年見られていたカワセミが殆んど姿を現さない、7月半ばに幼鳥が一瞬現れたがすぐに川の方へ飛び去って、以来現れない。暑すぎるのだろうか。
代わりと言ってはおかしいが、今年は近くで夏を越すマガモの姿が目につく。オスは非繁殖羽(eclips plumage)と呼ばれる殆んどメスと同じ姿となってパッとしなくなるが居ること自体が面白い。こんなに暑いのにと思ってしまうものの調べるとシベリアも今年は随分暑いようで、無理して帰らなくてもということを感じているのかもしれない。温暖化が渡り鳥の振る舞いにもじわじわと影響してきているように思えてしまう。
バンは相変わらず次々と雛を孵している。やや狭い睡蓮の池(50m四方位)ではカラスの攻撃に隠れる場所がないのかこのところ毎年生まれた雛は全滅している。今年も5月頃5-6羽を孵したがたちまち全てやられてしまった。8月初めにまた5-6羽の雛を孵したが、頑張れるだろうか。もう少し大きい池(150mx80m位)では順調に若鳥に育っているところを見ると池のサイズが生き残りには重要のようにみえる。ともかくめげず繰り返し努力する様は立派だ。
バンは渡りをしない鳥で水田に生息して大きな鳴き声を出すことから田んぼの番をしている鳥の意で番と呼ばれてきたと言われる、和語だ。日本のバンと同じcommon moorehenは世界中のやや暑い地方に広く分布しており、オーストラリアやアメリカ大陸でも非常によく似た種(dusty moorhenやcommon gallinule)として分布している、こんなに広い分布の種はそんなに多くはない。温暖な環境を好むようで温暖化してきた地球では更に生息範囲を広げていくのかもしれない。
身近で生命のサイクルが環境に適合しながら回っていく様は興味深いものがある。

コロナは変異種の勢いが一向に収まらない。風邪薬のようなCOVID-19薬が手軽に街で買えるようになるまでこんな日々が続くのだろうか。

写真は順に、1:去年夏のカワセミ幼鳥 2:溜池のマガモ 3:マガモつがい、上がオス(非繁殖羽又はエクリプス羽)下がメス、オスメスの区別はくちばしが黄色なのがオス。 4:蓮池のバン 5:バンの雛 6:雛を育てるバン 7:別の少し大きな池で育ったバン若鳥 

       

 

 All rights reserved 無断転用禁止 登録ユーザ募集中