JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Feb. 2022

Back number


■ 富士は日本一の山?? =PARTⅡ=  酒井英樹

 昨年最後のWEB-MAGAZINEでかつて(100年ほど前)日本の最高峰は富士山でなかった話をさせてもらった。その時現在の最高峰は富士山剣ヶ峰と言い切ってしまったが果たして正解だったのだろうか・・・。そこで話の続き・・
 続編のサガか・・前回よりスケールアップして視線を変えてみた。

 前回が日本一なら今回は世界一・・。世界一高い山はエベレスト(サガルマータ、標高8849m)・・小学生でも答えられる常識??・・。

世界最高峰??? 『サガルマータ(通称:エベレスト)』
 

 しかし、山の標高のほとんどが海抜距離(海水面からの距離)で測定している。日本の場合は東京湾平均海面(1873年から1879年の平均潮位)・・。エベレストをはじめ世界の山々の標高はもちろん別の基準から測っている。基準が違うのだから、どの山が世界一なのか比べようがない。
 そこで基準を従来のようにいくつも設けるのではなく、地心距離(地球の中心点からの距離)で山の高さを比べてみる。つまり地球の中心から一番遠いところが一番高い場所として比較する。

 地球の形状は球体ではない・・山あり谷ありの多少の凸凹を均しても完全な球体ではないことはあまり知られていない。
 地球は約23時間56分で一周(自転)する物体。回転することで回転軸から離れたところでは遠心力がより強く働く。つまり北極や南極より赤道直下の方が遠心力は強く働き、常に外側に引っ張られるので赤道の地表の方が南極の地表に比べ地球の中心から離れている。いわゆる回転楕円体と呼ばれる形状で、緯度が低いほど中心からの距離が大きくなる・・その差は約21㎞。

 地心距離が一番大きい場所・・世界一高い山の頂上は、南米エクアドルにある南緯1°29′標高6310mの「チンボラソ」(地心距離6384.458km)というほとんど無名に近い山の頂になる。
 ちなみに北緯27°59′標高8848mのエベレスト(サガルマータ)は32位(地心距離6382.270㎞)になる。

世界最高峰??? 『チンボラソ』
  


さて、話を冒頭の日本に戻すと、富士山(標高3776m、地心距離6374.488㎞)は北緯35°21.6′にあるため、北緯30°20.2′にある屋久島の宮之浦岳(標高1935m、地心距離6374.463㎞)とその差25mとほぼ同じ高さになる。
 では、日本一高いところはと言うと、やはり緯度が低いほど有利なのか・・日本最南端の北緯20°25.2′にある沖ノ鳥島(地心距離6375.595㎞)となってしまう。海抜0mの今にも消えそうな岩のような島・・国の大規模な護岸工事でかろうじて姿を海面から出すこの小さな陸地が日本の最高所とはいささか理解に苦しむが・・昨今はやりのグローバルスタンダードな観点から言えば紛れもなく日本一地球の中心から離れた場所、つまり高いところになる。

日本最高峰??? 『沖ノ鳥島』
 


 違和感しか残らない・・ここまで書いて今更何を言うのか?と思われるが、やはり個人的には富士山は日本一高い山であって欲しい。何もかもがグローバルスタンダードではなくローカルスタンダードでも良いのでは・・。
 と言うより・・そもそも山って何???・・その話はいずれ・・続くかなぁ・・・。


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