JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine May 2022


■ 河川水紀行  ~高津川~   酒井英樹

 
先日、ある映画を見た。
人口流出に歯止めのかからない地方を舞台にした映画だが、この映画で実質の主役となっているのがタイトルロールの「高津川」

映画『高津川』パンフレット と映画初主演の甲本雅裕氏

  

一般的にダムがない河川といわれ、映し出される川の映像は清流そのもの・・
 仕事がら下流の益田市にある国直轄(国土交通省中部地方整備局浜田河川国道事務所)管理区間は別として・・大臣指定区間(都道府県管理)の中上流部が未見であったこともあり・・機会を見つけて訪ねてみた。

一級水系高津川水系・・沖縄県を除く全国に109水系ある国が直接管理する水系(本川に流入・流出する全ての川をまとめて本川名を冠して「水系」という)の一つ・・その高津川水系の本川が高津川。
島根県西端の石見地方西部(吉賀町、津和野町、益田市)を流れ、幹川流路延長81km(62位/109水系)、流域(降水が水系の河川を経て海に流れる範囲)面積が約1,090㎢(63位/109水系)、支川数92の一級水系としては比較的中規模の水系・・
水質を示すBODは2020年度の調査で0.5㎎/L(16位/109水系)生物指標で綺麗な川とされている。
BOD(生物化学的酸素要求量):水中にある有機物を、微生物(バクテリア)が分解する時に消費する酸素の量。数値ガ小さいほど綺麗な水となる。

高津川源流
島根県吉賀町田野原にある水源公園にある大蛇ヶ池
    

大蛇ヶ池に湧き出る湧き水(水量:3㎥/日)
一本杉の湧き水として平成の名水百選に認定されている。出雲から逃げてきたヤマタノオロチの魂が一本杉に宿り、水が沸いて高津川となったという伝説の池
 

石見神楽『大蛇(おろち)』
 

瀬戸内海側に流れる一級水系錦川水系支流宇佐川や同水系深谷川によってかつての源流部を河川争奪されたため大蛇が池が源流となっている。

 河川争奪:河川の流域の一部分を別流域の河川が奪う(自らの流域に組み入れる)地理的現象。

 「水源祭り」
  もとは雨乞い神事
 

  源流(大蛇ヶ池)から流れ出た高津川最上流部
 
  
 「真田ポケットパーク」(吉賀町真田)付近の高津川
    

 「道の駅シルクウェイにちはら」(津和野町池村)付近の高津川
   

 津和野城から望む津和野川(高津川の一次支川)
  

 JR津和野駅(津和野町後田)付近の津和野川
  
 
  映画「高津川」では地域開発が悪く描かれている・・。
  一時とはいえ、河川行政を担ってきたものとして複雑な気持ちをもって見た映画であった。

 高津川をイメージした御菓子「高津川」

 

  観光地として有名な津和野の街並みも夜8時になれば夜の帳とともに静寂が覆う・・
  そのような現地に立ってみれば、私の蟠りなど・・高津川が洗い流してくれるように感じられた。

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