JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Aug. 2022


■ 暑い夏は鳥を見て過ごす 田中康平

 暑い夏が続いている。コロナの夏がまた過ぎて行く。今年の夏はその始まりから梅雨明けの様な天気が2度も現れたりして長くて暑い夏だ。
コロナの第7波が週別では日本が世界一の患者数を出し、ここ福岡も人口当たりの患者数では全国第2位となって、7月末に予定していたバス旅行も取りやめてしまった。ワクチンは4回接種したがブレークスルー感染もあるらしく外出は控えめにせざるを得ない。もっぱら近隣の散歩と鳥見で時を過ごしている。

鳥見ではこの時期は面白いところと、やりにくいところがある。やりにくいところは蝉の大合唱だ。特に九州はクマゼミが圧倒的で鳥の声を聴くことが殆どできない状態となる。(写真01) 鳥は通信手段としても鳴き声を使っているので、鳥の出そのものが悪くなる。鳥を見つけるのは鳴き声に頼ることも多く、いたとしても見つけにくいし、第一もう葉が茂ってきてそもそも見にくい。兎に角冬場のようにはいかない。

面白い方では次々と卵が孵されて幼鳥が増えてくることだ。人間もそうだが小さい子は無駄な動きをしたがり、ちょこまか動き回るところがあって面白い。体の模様が成鳥に較べてぼんやりしていたり嘴が黄色かったり、暫く見ていると幼鳥と分かるようになる。また群れの数が一気に増えてにぎやかになるので、あ、若鳥が飛び初めてきたとも感じる。

例えば燕だ。あちこちの巣で育ったヒナは夏の終わりには東南アジアまで親とともに飛んで帰らねばならない。それに備えて飛行訓練しはじめるようで、7月も半ばになると突然池の上に現れるツバメの数が2倍くらいに増える。飛んでいるツバメの写真は撮るのが難しいが数が増えてたくさん撮っているとなんとか撮れることがある、それもこの時期の楽しみの一つだ。(写真02,03,04)

スズメも多くなるが嘴の根元が黄色いので幼鳥とすぐわかる。この時期はパッと見た感じ群れの半分くらいが幼鳥になってくる。この頃面白いのは砂地を見つけては砂浴びをする姿が見られることだ。寄生虫を取るのだといわれるがよく見ると若い雀が多く面白がって遊んでいるように見えてしまう。いかにも若鳥がやりそうな行動ではある。(写真05,06)

バンはあまり飛ばないのでヒナの巣立ちという節目が判然としないように思う。幼いヒナは親の後ろをついて回って餌をもらうが、自分の位置を知らせるようにヒーヒーという声を出し続ける。刷り込まれているようだ。声を出さなくなり若鳥として一人で餌をとるようになると一応一人前のように見える、巣立ちのようなものなのだろう。今年は何時も散歩で訪れるスイレンの池で若鳥が4羽まだ生き残っている。(写真07) いつもの年ではヒナの段階でほぼ全滅していたのだが今年は違う。恐らくスイレンの覆う面積がいつもの2倍以上に広がって隠れ場所が増えたり餌をたくさんとれるようになったりしたことと関係しているのだろう。同じ様にめぐる季節もいつも新しい。

コロナの夏でも猛暑の夏でも生き物たちは精一杯生きている姿を見せつけてくれる、地球もまだまだ大丈夫なのだろう。

      

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