Monthly Web Magazine Aug. 2022
■ 「患者ID:220726xxxx」(自宅療養者みなし陽性) 柚原君子
娘家族向け
年寄り向け
みなし……仮にそうであると想定すること。
我家は娘夫婦と同居で、小学生孫、中学生孫とともに五人家族。中学生の孫が学級閉鎖寸前のクラスからコロナをもらい受けたようで、40度近い熱が出て個室隔離「くそー!なんで俺がコロナだよー」という声が子ども部屋から時々聞こえた。発熱以外の症状はあまりなく3日で回復。その頃に婿殿発熱。会社規則で10日間は出社禁止とかで、コロナだけれど発熱以外は咳と喉の痛みが少々あるのみで、何だか公に休める10日間がちょっと嬉しそうな横顔を二、三度見たような気ガ……スル。
次いで小学生の孫と娘が同時にうつり、最後が私。娘一家はかかり付けの内科医に診てもらい、コロナと確定したが、最後の私が内科医に行こうとしたら、「来んでもよろしい!見なし陽性とする」という診断で、近所の調剤薬局の職員が薬を届けに来た。
コロナの薬は5種類。普段飲んでいる糖尿と血圧の錠剤が5錠あるがすべてきちんと飲むようにとの指示なので、いいのかなぁ、とおもいつつ合計の10錠を手のひらに載せて一気に飲む。
コロナの薬は無いと聞いていたので、薬が出たのには少し驚く。風邪に対する対処療法のようなものでトラネキサム酸錠(炎症アレルギー止)。レパミド錠(胃壁守り)、アスペリン錠(咳止め)、カルボシスティン錠(痰をとる)、カロナール(解熱)、これを1日3回。その他にもしも熱が40度台近くなったときに飲むいわゆる頓服。幸い頓服を飲むほどの熱ではなかったのでこれは飲まなかった。
主治医から連絡が行き、板橋区保健所予防対策課感染症相談資料係より電話。冒頭の患者IDを告げられ、以後は「東京都自宅療養者フォローアップセンター」より毎日電話が来るとのこと。またコロナに罹患した方は東京都より外出をせずとも生活できるように、生活用品と食料が来るので連絡をとのこと。
娘一家の所には段ボールの大きな箱がもう二箱到着していて、写真のようなものすごい物が家族数あって、ビックリしたので、私も電話をした。
すると係の人が申し訳なさそうに「急にここのところ東京都の患者が多くなり、近所に買いに行ってくれる人が居る人、親戚が近くにある人、同居している人がコロナに罹っていない人などは、出来たら食料の段ボールを遠慮して欲しい!」、とソフトな声でのお願いをされた。
それでも私は娘一家のを見ているので、私も欲しい旨、伝えて引き下がらなかったら、なんと、翌日宅配便で酸素濃度をはかる「パルキオシキメーター」とともに食料が届いた。「パルキオシキメーター」はコロナが治って外出許可が出たら、郵便局より返送して欲しい封筒付きだった。
段ボールは私のはどうも年寄り向きで(笑)、鯖の缶詰、イワシの缶詰、煮込みうどん、カレーライスも昔風なソフトな味など。若者向き家族段ボールと年寄り向けがあることが判明して、ちょっとおかしく咳をしながらながめた。
それでもゼリーやかじるだけでカロリーのあるビスケットや、野菜ジュースなどもあり、コロナ禍でてんてこ舞いしている人々が医療関係者だけでなくいらっしゃるのだ、と頭がさがった。
コロナはなんの手立てもなく自宅で寝ているだけ。運が悪ければ命も持って行かれる、と怖い想いはあったが、家族五人が順次罹患して、その経過も後遺症も人それぞれ全く違うことがわかった。
「急に罹患者が増えたので、毎日の経過観察はお電話出来なくなりましたが、1日おきに電話しますので様子を知らせて下さい」、と東京都。翌々日から一週間、1日おきに電話が来て酸素濃度.発熱.現在出ている咳などの症状を訊かれた。「熱が下がった時点で解熱剤をやめてそこから一週間経過で外出OKが出ます。」解熱した日を訊かれて外出解禁日が割り出された。
「それでは水曜日の夜24時00分過ぎたら外出OKです。」と言われた。ソンナ夜中に出ません、と思ったけれど、出なければならない人も居るのだろうと、有難くお礼を言って経過観察を終えて貰った。
食事の味が無味乾燥の味覚障害とひどい咳こみが残った。味覚障害は酢が全く感じられないのが特に残り心太は蕎麦のようだった。みなしコロナ陽性から数えて今日で18日目。何もやる気が起きなかった時期に比べれば、今日は何をしようかと考えられるようになった。そしてお酢味も戻ってきた。咳き込んでいるのも少しになった。
家族の中で後遺症が出たのは私と娘だけで、娘は大好きなアロマの香りがゲロを吐きそうな香りに感じた、と顔をしかめていた。
ちなみに我が家でワクチンを打っているのは会社がらみで絶対必要であった婿殿だけ。私と娘は(ワクチン論争はしたくはないが)実績のないものを体に入れる気がしなくって打っていないし、中学生と小学生の孫たちは強制ではないので打っていない。我が家でワクチン接種は会社員の婿殿だけ。打つ打たないにかかわらず全員罹ったが、いわゆる全員軽症で済んだ。
不明部分が多いコロナを、国民を正しく誘導していないとたたかれる人々もいるが、少し気の毒な気もする。異常気象があり極の氷が融け森林が破壊されていくと未知のウィルスが出る可能性も高くなる。
コロナを終えてやや動く頭になってきて、孫たちはこれから生きていくのは大変だろうなぁ、と思った。
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