新潟県十日町市 留守原の棚田
Rusuhara,Tokamachi city,Niigata
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天水田に写った紅葉の絶景
30年ほどこの付近の棚田を訪問しているが、今回は2009年と共に絶好の機会に恵まれた。
この絶景は、日本特有の里山と棚田が作る人文景観(文化的景観)の典型ともいえるものだ。
そもそも「絶景」にはそれが成立するための地理的、景観工学的な科学的メカニズムが説明されるべきであり、巷に氾濫する安易な「絶景」とは次元が異なる。
そのメカニズムは2009年に簡易に記述した。
さらに、この絶景は「危機遺産」である。留守原の棚田も耕作放棄の危機に直面している。
これを生み出す文化的景観の成立過程と消滅の危機に直面する危機遺産的状況について、下記の参考文献が分かりやすい。
(用語「文化的景観」の「文化」とは、まさしく文化の源となる"Culture"(耕作)の語源に由来するものであり、棚田や段畑の景観はこれにふさわしい。)
参考文献
人文地理 第49巻 第5号 (1997)地すべり地帯における明治中期以降の天水田開発-新潟県東頸城郡松之山町松口集落の事例-亀岡岳志
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhg1948/49/5/49_5_497/_pdf
Sep.5, 2015 瀧山幸伸
Edited Movie Download (YouTube)
Sep.2012 瀧山幸伸 source movie
留守原の棚田
留守原の棚田
Nov.2009 撮影/文:瀧山幸伸 source movie
天水田の文化的景観
「耕して天に到る」棚田。
この地区では、水不足を補うために、稲刈り後すぐに田を鋤き、しろかきとあぜ塗りを行い、翌春の田植に備えて雨と雪の水を貯める。
田に映り込む風景が美しいが、耕作放棄の危機に直面している。この光景を未来に伝えることは容易ではなく、危機遺産の一つと言える。
留守原の棚田の幻影 (午後2時から日没の4時半までの光景)
この絶景は、楽しみながら学べる理科と社会科の教材として最適だ。
理屈ではわかるのだが、反射が絶妙となる場所と時間を見極めるのは難しい。
山間の棚田の日没は早い。背景の紅葉と青空が雨水を貯めた棚田に反射するのは日没近く。
太陽を背にして立ち、正面に紅葉の山と青空を据える。足元には水を張った棚田が必要だ。
この地方に特に多かった天水田は、灌漑用水が得られない山頂近くの小規模な棚田が、冬場の大量の降雪を翌年の田植え期から梅雨までの農業用水として利用するシステムで、稲刈り後すぐに田を耕してしろかきを終え、収穫期にひび割れた棚田の保水力を復元しておくものだ。
紅葉の時期はしろかきの直後で、山からの湧水と少量の降雨しか期待できないので、昼間の濁った水の棚田景観はそれほど美しいものではない。
だが、日没近くなり太陽光の照射角度が低くなると、昼間は白く濁っている田の水面が鏡に変身し、正面の景色を映す瞬間が現れる。
この光景を見ることができる条件は限られている。
美しい紅葉の盛りは一週間足らずしかない。毎年11月上旬だ。正面の山はブナなど広葉樹の紅葉が美しい。
空は晴れていければ美しい紅葉と青空とのコントラストが生まれない。
当然ながら、風がないことが必須で、少しでも波が立てば正面の景色が反射しない。
分刻みで遷り行く陽光と陰。
当初は田の水面が輝き、紅葉風景と倒立した水面の風景が一体となって光る。
やがて背後の山影が徐々に増えて、正面の紅葉にシンメトリーな影を増やして行く。
数分間のタイミングでコントラストが頂点に達する。
その瞬間の幻想風景に出会うと、震えるほどの感動を覚える。
Sep.2009 撮影/文:瀧山幸伸 source movie
留守原の棚田
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