JAPAN GEOGRAPHIC

沖縄県南城市 仲村渠樋川

Nakandakarihije,Nanjo city,Okinawa

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Sep.30,2020 酒井英樹
 
 仲村渠樋川は、沖縄県本島南端部の仲村渠集落から海岸に向かって降る傾斜地を切り開いて建設された集落共同の水場である。
 2箇所からの湧水をいったん水槽に貯えた後に洗い場へ放流し、飲用水や洗濯、野菜洗い、水浴びなどの生活用水として用い、暗渠を経て広場の南方に排水する。

 古くは「うふがー」とも呼ばれ、集落から降りる石畳があったほかは、松の木の樋1本を据えた程度の簡単な施設であったが、大正元年(1912)に津堅島の石大工に依頼して、琉球石灰岩で築いた現在の構えに改めたという。
 東に男性用の「いきががー」、西に女性用の「いなぐがー」という大小2組の水場が南面して並ぶ。
 両者ともに洗い場と水槽からなる。
 西北の山側には野面石積の擁壁を築き、西面擁壁沿いに湧水を導く暗渠、西面擁壁と洗い場の間には水の神を奉る拝所を設ける。
 また、水場の南に広場を設け、その西には集落から降りてくる石畳(かーびら)がある。

 いきががーは、石切積の高さ約1mの擁壁で囲った内法東西6.6m、南北4.2mの区画を洗い場とし、南辺の東西両端には広場から降りる石段を設ける。
 洗い場の背面擁壁上には切石積の水槽(芋洗い場)を築き、切石の目地や表面仕上げにモルタルを用いる。

 いなぐがーは、いきががーと類似の構成をもつが、洗い場の内法東西2.3m、南北2.7mと小規模で、床面は全体に浅く、後方部を1段下げる。
 周囲には目隠し塀を廻し、後方西寄りに奥行の深い水槽を設ける。

 石畳は、人頭大の石灰岩を敷き詰めた幅約3m、長さ約22mの坂道で、長さ約2mごとに石段1段を設けるが、西方部では敷石が乱れている。
東方部の平面の広場も重要文化財指定前(昭和39年(1964)は仮改修にて)はモルタルであったが、指定後の平成16年(2004)の修復で元の石敷で復元されている。

また、戦災で破壊された共同風呂も最近復旧させている。

 仲村渠樋川は、沖縄の伝統的な集落に見られる用水施設の様子をよく示し、水槽も備えるなど石組による人工的な施設として発達した姿を示している。
 全体の構成に優れた造形意匠をみせ、沖縄に特有な石造井泉を代表するものの一つとして貴重である。
       


  <いきががー>
                   

  《芋洗い場》
     
 
  <いなぐがー>
    

  <共同風呂場>
     

  <拝所> 
  

  <排水口> 
  


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