大阪 生駒ビルヂング
Ikoma building, Osaka city, Osaka
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June 2010 撮影 柴田由紀江
解説文(生駒ビルヂングのサイトより)
大阪市中央区平野町2-2-12
竣工:昭和5年(1930年)
設計:宗建築事務所
施工:大林組
構造:鉄筋コンクリート造、地上5階地下1階、塔屋付き
国登録有形文化財
生駒時計店は、元来は袋物や小物を扱って江戸時代後半から商いを始め、 明治3年に中央区今橋(淀屋橋筋西側)に大阪屋権七が「大権堂・生駒商店」を創業したのが始まりである。 昭和初期の御堂筋・淀屋橋筋の拡張に伴って、現在の北浜(堺筋平野町西南角)に移転し、昭和5年に当時のお金で15万円をかけ「生駒ビルヂング」の建設を行った。昭和20年3月の大阪大空襲により、周辺は焼野原となったが、当ビルは堅牢なコンクリート壁と各開口部の防火扉によって戦災を免れた。その後、1983年に外壁のテラコッタの一部が落下したことを契機に、外壁剥離防止及び鉄製窓枠を全てアルミサッシに替える大改修を行っている。
平成7年の阪神大震災の時も、隣接するビルの窓の大半が破損する状態においても直径6寸5分の松丸太を493本基礎杭として打ち込んだ工法の為か、ほとんど被害がなく現在に至っており、平成9年には文化庁の「登録有形文化財」に指定された。
20世紀初頭から流行した「アール・デコ」の様式を多分に取り入れた 設計者宗兵蔵氏の代表的建築の一つで、当時も「モダン」なビルと言われた。
大理石の階段
イタリー産の大理石を使用した階段には戦前より赤いじゅうたんが敷かれている。
下から3段目に、大きなアンモナイトの化石が明瞭に見えるということだが、現在はじゅうたんに隠れてしまっている。大理石は2階までである。
エレベーター
機械一式は1982年新しく入れ替えたが、以前は12人乗りの大型、 手動式で二重の格子扉であった。しかも店舗の設計上1階のみ北向にドアが開く二方向ドアの特別製だった。
新機は法律上の規制もあって一方口となっている。
現在使用していない1階の「北向のドア」(今のエレベーター入り口の右側面)は往時のまま。
上部の大理石で囲った回転式インジゲーターとともに完全保存されている。
ホールクロック
2階に飾られているホールクロックは、新築に当たり生駒吉之助がロンドンのベンソン社まで行って直接購入し、50年間標準時計として使用してきたもので、中央は分針1本のみ、重錘捲き上げ式の八日巻の珍しいものである。現在機械不良で簡単に修理も出来ず、たとえ修理してもその精度はクォーツの安価な時計にも劣るため使用していないが、このビルの出来たときから主(ヌシ)的存在として大事にされている。
(柴田)ベンソン社とは正規代理店契約が結ばれており、証の額も大切に保管されていました。
時計塔のゴング
時計塔の屋上に取り付けられていたが、時計の機械を取替えた時(1980年)以来 東京のセイコー資料館に寄託陳列されていた。 1996年同資料館が閉鎖され返却されてきたものである。50年の風雪にさらされながら、澄んだ音を随分遠くまで響かせていたと云われている。
(柴田)建物のあちらこちらに見られるアールデコ調の凝った意匠は、壁の照明や床置きのフロアライト(ペンダントだった物をリメイクしたそうです)、ステンドグラスや階段手摺りの曲線にも生きています。
さりげなく置かれたル・コルビュジエのソファの上には改装の際に塗り直しされた美しい飾り板が貼られています。
また、階段そのものの造形も実に優雅な曲線に満ち、見下ろした光景が特に印象的でした。
(柴田)生駒ビルヂングには、貴重な資料や永い年月を経てきた宝物が沢山ございます。その一部を拝見し、生駒時計店さんの歴史の長さに感激いたしました。特に、時計店内部のお写真はとてもハイカラで、当時庶民にはなかなか手に入らなかった高級品を扱うお店、という威厳に満ちていました。
(柴田)生駒ビルヂングの天辺に堂々と構える時計塔は、2009年11月に改修工事が行われました。大阪市の、歴史的建造物や景観を大切にしようという取り組みに、そしてこうしたビルオーナーの方々が改修費を捻出なさって維持していかれる姿勢に感激いたしました。
時計塔の歴史と改修工事
イギリスのBENSON社の時計から数えて3代目、最新式の電波時計となりました。
あわせて、失われていた文字板の数字と、針の照明を復元しました。
さらに、単なる時計塔ではなく、出窓と丸窓を『振り子』に見立てた設計を活かし、最新の全天候型LEDによって、その振り子のデザインを現代に甦らせました。
この改修事業は、『まちなみ修景』を目的とした『ホープゾーン事業』に選ばれ、大阪市から事業費の一部を助成戴きました。
(柴田)時計塔は、竣工当時の資料に基づいて忠実に再現されたそうです。現オーナーの生駒氏によれば、建築当時の資料はこのような箱に納められ、きちんと保存されていたとのことです。
(柴田)生駒時計店製の銀細工品など、現在もオークションなどで多く見られる高級品の数々を世に残した大大阪時代の記憶を、様々な意匠や品々と共にじっくり鑑賞させて頂けて、とても幸せなひと時でした。
現オーナーの生駒氏に、大大阪時代の市内の様子や現存する近代建築の維持について伺えた事は、大変勉強になりました。
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