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滋賀県大津市 日吉大社 包丁まつり

Hochomatsuri,Hiyoshitaisha,Otsu city,Shiga

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June 2012 中山辰夫

日吉大社では、毎年6月、古包丁を供養する「包丁まつり」が行われる。

会場は西本宮の境内、拝殿(国重要文化財)と本殿(国宝)および竈殿社である。日吉大社のシンボル・山王鳥居(滋賀県文化財)をくぐるとすぐに楼門(国重要文化財)。

楼門前に設けられた茶席で一服して接待を受ける。

本日の目玉は、包丁まつりの一環として、宮中や将軍家の料理作法を伝える「式包丁」の清和四條流家元が

日本初という「野菜の式包丁」を日吉大社に奉納されることである。

今回は、キュウリやダイコンなどの地場野菜を厳かに調理し、五穀豊穣を祈願する儀式である。

平安期の宮中儀式に由来する「式包丁」。

右手に包丁、左手に箸を持ち、添え物には一切手を触れず切って盛り付けをし、奉納する技である。

通常使われる供物は鮮魚であるが、今年は新鮮な野菜が食材として使われた。

 

張り詰めた雰囲気の漂うに四本宮の境内。拝殿前には、県内外の料理人による奉納料理が並ぶ。

宮司・他が登場し終わると、料理人や参列者全員にお祓いが行われる。

雅楽の響きが否応なしにボルテージをあげる。

本殿の御簾が巻き上げられ、外陣の板扉が開かれ、滋賀産のお米と野菜が神前に奉納される。

儀式は、本日の料理人である包丁人、納め人、持出人、沿人、後見人の紹介から始まった。

包丁人は三十五代家元の清元健盛さん。日本初の「野菜の式包丁」に挑戦だ。夫々の役割に合わした作法で儀式が進む。

式台上の「まないた」の清めが行われ、キュウリ、ダイコン、ナス、カボチャ、トマトの食材が運ばれる。

運ばれた食材を、料理しやすいように並べる儀式が始まる。

料理人は烏帽子と直垂(ひたたれ)を身にまとっている。

包丁と菜箸のみを使い素材には一切手を触れずに運ぶ。動物性の材料の場合は真魚箸(まなばし)を使う。

その儀式には、天下泰平や五穀豊穣の思いがこめられ、命の根源となる食料を大切に扱っていたことが分かる。

食材を移し終えて、次の儀式となる。主役である包丁人による調理が始まる。

静寂でかつ厳かな雰囲気の中で、粛々と調理は進む。

簡単そうに見える野菜切りであるが、実は魚介類よりも難しいとされる。

通常野菜は手で固定して切るものですが、奉納神事では手は使えない。

キュウリを蛇腹状に切ったり、ダイコンを斜めに「切り違い」にしたり、難しい調理が進む。

食材の5色を活かした盛付けへの配慮も必要だ。

盛り付けを終えた、見事な完成品は神前へ奉納

献茶

お神楽・剣の舞が奉納され、一連の式包丁の儀式は終わりである。

その後は、竈殿社で古包丁の供養が行われた。

大津市で懐石料理店を営む清本健盛さんは、平安末期に始まる日本包丁道「清和四条流」35代家元。

食材に、滋賀の伝統野菜を使って匠の技を披露された。

人気の京野菜の陰で「滋賀の伝統野菜の良さが知られていないのが残念」と野菜の式包丁復活を思い

たったと聞く。

野菜の式包丁は文献には残るが「種類や作法は伝わっていない」。そこで五穀豊穣を祈念しキュウリ

ナス・トマト・カボチャなど5色の野菜を選んだ。5種類の野菜を調理し、5色を表現し、魔除けの

意味を込めた。神聖な気持ちで奉納できた」と満足げ。

今回の挑戦では、「鮮魚は皮1枚残す技巧が必要だが、野菜は一刀のもとに切り落して包丁の切れ味を

見せたい」と、歩き方、座り方、礼の仕方なども特別な研鑽に励まれたようだ。

「直会・なおらい」は日吉会館であった。

地場野菜を盛り込んだお弁当だった。

日吉会館

桁裄25.6m 梁行16.9m 南正面式台玄関付 間口4.9m 奥行き2.6m 棟段違い

西棟入母屋造桟瓦葺 東棟切妻造桟瓦葺 玄関入母屋造妻入桟瓦葺 江戸後期建造日吉会館は昭和29年(1954)に日吉大社境内の現位置に移築された建物で、園城寺(三井寺)に県庁が

置かれた時の官舎であった。園城寺の事務機関である政庁の江戸時代の遺構である。

市が県庁は、大津県庁が明治2年(1869)正月に園城寺円満院に置かれ、明治5年には滋賀県庁となり

明治21年(1888)新庁舎が完成するまで20年近く円満院に置かれていた。この時、政所は官邸舎として

使用されていた。

明治初期の県庁関連の遺構としても極めて重要な建物とさえる。

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