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滋賀県大津市 安楽律院

Otsu Anraku Ritsuin

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Mar. 2006 撮影/文:中山辰夫

安楽律院

 比叡山千日回峰行の一つである飯室谷回峰行の基点、飯室谷不動堂から歩いて15分ほどの距離にある安楽谷。そこに安楽律院があります。

その歴史は古い。が江戸時代、厳しい戒律を唱えた一門が再興しました。

厳しい自然環境の中で、厳格な修行に打ち込む修行僧たちの姿か浮かびます。

昭和24年放火により焼失。本堂、護摩堂、山門のみが残り、現在は無住の廃寺同様です。

この先石段には、放置され、忘れられ、埋もれてゆく運命しか残されていないことに寂しい思いで一杯です。

 慈忍和尚廟 松禅院(まつぜんいん) 飯室不動堂

律院には藤原定家の爪を納めた塚や

[ふむだにも縁なるてふ此山の土となる身はたのもしきかな]の歌碑があります。

住所:大津市坂本本町4239

交通:西教寺より徒歩で約40分

 西教寺は京阪電車石坂線坂本駅下車 徒歩で20分

石なるが故に残る−安楽律寺 壊れては積むの繰り返し

比叡山の麓、坂本の日吉大社・西教寺を経て安楽律院(天台宗)まで四十分足を延ばした。山裾に石標発見。そこが登り口だった。

一メ−トル強の藪に近い山林の獣道に似た道を歩くと狭い橋に出る。そこを渡ると千古の杉の大木が両側に並ぶ参道が続き、その奥に慈忍(じにん)和尚の墓がある。

前方には穴太(あのう)衆積の道(苔でムンムンした石垣と石畳)が静かに迎える

この界隈は飯室谷の修行の場。左側には回峰行で知られる飯室(いむろ)不動堂があり、さらに川をわたると安楽律院と彫った石標が建つ。

安楽律院は寛和五年(九八五年)藤原師輔(慈忍の父一門の僧、叡桓(えいかん)により開祖された念仏道場。江戸期に厳格な戒律主義を提唱して復興し、比叡山に一石を投じて著名となった。

本堂は昭和二十四年に焼失。今は伽藍の一部が残っているのみ。安楽律院への登り道は狭い。

古道の石段は風雨に流されて土が剥き出しだ。どんな所かと不安が続く。峠を上り、切り通しを過ぎると、道の両側に大きな石柱が建っていた。難しい字が彫り込んであった。「ここから登る者は身も心も清浄にして霊感に触れるよう」との戒めが刻まれ、思わず体内に緊張が走る。

足元から眼下を覗けば谷底に向かって、幅広な石段が緩やかなカ—ブを描いてかなり先の山門まで続いているのが見える。凄い石段の流れだ!こんな石段が安楽谷に被さっていたなんて、まさかと疑った。何故こんな山奥に石段が・・・。花崗岩(一辺が六十センチメ−トル前後)の割石が、山門までのかなりの長い距離ゴツゴツ並べている。

全部で九十五段ある石段の中央部には、五十センチメートル程の石が下まで、一段毎に二個丁寧に並び、石畳風に積み上げ、石畳が石段の曲線を鮮明にし、優美に映している。

モミジの落ち葉が石段の上に降り積もり、その合間から苔が顔を出すほど訪れる人は稀かも知れない。

閑寂な山門へは、幅五メ−トル程の切石で出来た石段を十一段登る。石段の周囲は石畳で化粧されており、江戸期の造りと思った。が両側にある石垣は質素で、もっと古そうだ。

山門の前から下りてきた石段を見上げると、石は形も大きさも色合いもバラバラでその表情が面白い。山門を見上げると《秘蔵窟(ひぞうくつ)》の額が見え、だんだん安楽律院のイメ—ジが沸いてくる。

山門を潜ると上りの石段がさらに続く。やや小振りな割石がランダムに置かれ、総数で七十七段。これを登り切ったやや高い位置にある台地が本堂跡だ。

蜿蜒と続いた石段は圧巻だ。山門は質素で、朽ちかけていた。石段は先に続いていた。

広い本堂跡に残るのは二棟のお堂のみ。幅約十五メ−トル。長さ、約六十メ−トルの伽藍跡には礎石とその周りを囲む敷石だけが残っていた。苔と草に覆われつつところどころ顔を出している石畳、静かに在りし日を語っているように感じる。

周りの山に向かって石段の道があちこち延びる。登りつめると、開基した叡桓の墓地や江戸期復興に努めた高僧の墓が建つ。又、歌人藤原定家の爪塚や歌碑もある。

創建以来続く谷間から湧き出る水との戦いを石段が語る。コツコツと積んでは直し、壊れては積むの繰り返し。厳しい修行に苦しみ、耐えながら石段の修復を繰返す学僧の姿が目に浮かぶ。

この山門と石段はどんな運命をたどるのか。忘れて欲しくない。何時までも現代と結びつき残って欲しい。石なるが故に残り続けられる。 

1 西教寺 

2 登り道

 

3 谷合の橋

 

4飯室谷

 

5慈忍和尚廟 

6 大杉 7 大杉2 8大杉3

  

9 廟 10飯室不動堂への道 11石積 12 石積2

13不動堂地図 14松禅院門 15松禅院庭 16飯室不動堂参道

 

 

 17不動堂 18律院のぼり口 19のぼり道2 20律院入口

21石柱 22山門への石段 23山門への石段下から見る 24山門

25山門2 26山門3 27本堂への石段 28本堂への石段2

 

29本堂への石段3 30説明 31寺院 32寺院

 34寺院 35残存の敷石 36高僧の墓 37碑

38定家 歌碑 39開祖叡桓の墓 

 

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