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滋賀県豊郷町 砂山池と龍ケ池揚水機場

Sunayamaike/Ryugaike,Toyosato town,Shiga

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Aug.2013 撮影: 中山辰夫

犬上郡豊郷町

土木遺産

砂山池(豊郷町四十九院)と龍ケ池(豊郷町石畑)の揚水機場は、日本で最初の蒸気動力(蒸気ポンプ)による農業用の地下水施設である。

明治の終わりに設置されたが、今なお現役として使われている。

豊郷関係

■■■滋賀県豊郷村(現豊郷町)は、滋賀県東部に位置し、地勢では平坦で地味は肥沃、米作に適していたが、古来、水利に恵まれず、度々干ばつに悩まされていた。農業用水は、鈴鹿山脈に源を発し琵琶湖に注ぐ犬上川の一の井堰から取水していたが、堰は遠く離れ、取水には複雑な慣例がありしばしば水争いが繰り返されていた。水争いは川上と川下で、川下はいつも不利であった。

1909(明治42)年7月10日から8月27日迄の間、雨が一滴も降らず、大日照りに見舞われた。

これを契機に地主有志が、動力による地下水の揚水計画を立案し、用水事業を完工した。(以下は添付資料を参照)

■■■砂山池揚水機場

■■機場の遠景、建屋 ガラリ付屋根もバランスがいい。90余年の経過を感じさせない。重要なものとして大事に扱われてきたことが分かる。

■1919(大正2)年竣工 灌漑区域:約58、5ha  井戸の大きさ:地平面=長さ:約40m、幅14,5m 常水面=長さ約29m、幅約3,6m、深さ約2,7m

■■施設

■揚水ポンプ「コンケロル式ポンプ」

当時、世界で最も機能が優れていたイギリスのアーレン社から購入

■取水井戸

丸太、切り梁が複雑に配置されている。石組は3段、下段は木矢板。深く縦長で大きい。アーチ上に煉瓦積など目を惹く。

■その他

■■■ 龍ケ池揚水機場

砂山池からも近い距離にある。

■石碑

大正2年に建立された。八大竜王(雨乞いの神)に因んで、龍ケ池と命名された。

■■施設

1910(明治43)年竣工 灌漑区域:約31.4ha  井戸の大きさ:地平面=長さ:約16,4m、幅16,4m 常水面=長さ約4,5m、幅約3,6m、深さ約10.9m

■雨井神社

■■■施設工事

突貫工事は、かがり火を焚いて明かりを取り、昼夜を分かたず行われた。述べ1万人を動員したとある。吐水口から勢いよく吐き出される水を見て村人たちの感動は頂点に達した。

■■この揚水事業は快挙で、全国から見学者が訪れ、この破天荒な事業に感嘆した。多くの恵みをもたらした事業は、各地で取り入れられた。

この事業を取り仕切った若干27歳の青年区長は「私の田畑は比較的水利に恵まれていた。自分の田畑が日焼けに合うから第一線で働いたのではない。全く純粋無垢の精神で奉仕したのだ」と語ったとされる。

■「豊郷 とよさと」という地名は米穀の豊穣を願ってつけられた瑞祥地名であり、ここにも旱魃との苦闘の歴史が反映されていた。一滴の水争いは壮烈だった。

「豊郷村史」には「…・常時大量積水のおかげで、再び旧に復し、いな旧にも増して地下水は無尽蔵に湧出するようになった。誠に "天道、人を殺さず" である」と、水との闘いから解放された喜びが記されている。

■豊郷村史に見る関連記事

「豊郷村耕地整理組合」は揚水機新設にあたり結成された組合。

「一等賞金碑」

大正2年富山県主催の一府八県連合共進会で、農商務大臣から一等賞金の受賞の栄を得てその成績が全国に伝わるや各府県で地下水利用の施設の企画が広まった。

■■■豊郷からは偉人が傑出している。

豊郷の人達には、先人の偉業とその魂がそのまま受け継がれているのであろう。

参考資料≪水の土木遺産、豊郷村史、他≫

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