滋賀県野洲市 蓮乗寺
Yasu Renjoji
Nov. 2009 撮影/文: 中山辰夫
中主町内の文化財の概況
中主町は近江の穀倉地帯である湖東平野の中心部である。昭和30年、兵主村、中里村が合併中主町となり、その後中主村の吉川・菖蒲喜合を編入した。また平成16年10月に野洲市と合併になった。
中主町は滋賀県最大の流域面積を持つ野洲川の右岸下流域に所在する20k㎡余の町である。
この中に中世では「兵主十八郷」とよばれた村が存在し、現在では二十大字(区)がある。
開発の歴史は古く、五条・六条といった、古代の条里制の名残に地名を残している。
町内に国指定の名勝や重要文化財は十一件ある。大字の数と面積からいうならば極めて多い数といえる。
見所は兵主神社や錦織寺、法蔵寺、仏法寺などの古社寺がある。
この指定文化財の多い理由の一つに、平安時代初期の貞観年間より国史に神名をのせ、中主町域の殆んどの村を氏子圏とする兵主神社の存在がある。
社寺建築では、兵主神社楼門(天文19年1879建立)が県指定有形文化財となっている。
一間社流造が大部分の神社の中で、切妻造の兵主神社本殿は特殊例である。
虫生神社本殿は一間社流造のうちでも大型のもので、18世紀末頃の建立になるものである。
拝殿は入母屋造、妻入の独立拝殿が多い。
寺院は浄土真宗が圧倒的に多く、浄土・天台がこれに次ぐ。浄土真宗寺院でも本山である錦織寺があるためか木辺派が多いのが特色である。
蓮乗寺本堂は天台宗寺院本堂の一つで、寛政2年(1790)の鬼瓦銘がある。表門は一間薬医門で文久2年(1862)の建立になる。
宗派を問わず表門を一間薬医門とするものが多い。
文化財の多い理由の二つに、兵主神社の所蔵品の多さがある。特に工芸品の多さは、滋賀県内でも最も多くの所蔵品を持つ神社といえる。
この兵主神社に残される文化財の特徴は
①中世にあっては「つわものぬし」という神名から、源頼朝や足利尊氏などの武家の崇敬を受け武具や甲冑などの遺品や伝承が多いこと。
②神仏習合時代の極めて優秀な仏教関係の工芸品が多いこと
③本殿の建替えに伴う神宝類の新調により比較的纏まった一括品が残っていること
などがあげられる。
また、国指定の名勝庭園もこれに加わり、兵主神社は、中主町における文化財の宝庫であるといえる。
次に、多い仏像彫刻については、重要文化財七件が仏像である。
このうち二件は薬師如来坐像で、各村の村堂に所在していた。その他に小像が残されている。
その一方で、丈六の大形の仏像が野洲川北流沿いに集中して残されている。
これらは大形の寺院の存在がないと説明できないとされ、大規模な大伽藍の存在が期待される。今後の文化財調査が明らかにするだろう。
これら文化財は、展示され鑑賞されるだけでなく、今も町の人たちの信仰の対象であり、人々の心の拠り所となって、長く大事に守られている様子が町の行事を通じてヒシヒシと感じられる。
滋賀県野洲市 蓮乗寺
Yasu Renjoji
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野洲市中主町比江1191
天台真盛宗
町の南端、野洲川右岸の比江地区にある天台真盛寺。
天長元年(824)奥州の沙門禅源が比叡山で修行中に夢告を得て山門を去り、当地を訪れ、長沢神社の神宮寺として当寺を建立した。
寺蔵の木造毘沙門天立像(国指定重文)は禅源が本尊として祀ったもので、空海作と伝える。
文亀2年(1502)西教寺(大津市)の僧盛全によって殿堂・庫裏・大門などが再興された。
永正2年(1505)盛全の没後は天台真盛宗の僧によって継承されている
境内地は約2,000㎡、本堂・庫裏・山門などを備え、本尊に阿弥陀如来を祀っている。
表門
一間薬医門で文久2年(1862)の建立である。
本堂
天台宗寺院本堂の一つで、寛政2年(1790)の鬼瓦銘がある。
木造毘沙門天立像
国重要文化財:彫刻:指定 1909・09・21
像高:48.5cm 平安時代
本堂の左脇壇の厨子内に安置される天部形の立像。右手で戟、左手で剣を執り、右ひじを曲げて邪鬼を踏み、左前方をにらみすえる。
その姿勢からして、四天王もしくは二天一つとして須弥壇上に安置されていたと思われる。
頭から足までの幹部はヒノキ一材から彫出し、内刳(えぐり)しない。甲胃や裳などに、金箔や朱がわずかに認められ美しく彩色されていたと思われる。
50cmに満たない小像であるが、目を見開いて口を開ける表情、体の姿勢や重量感に満ちた姿勢など、極めて動的は天部像である。
平安時代のもの。 寺伝では空海の自作としている。
参考資料:【野洲町史通史編】【歴史と文化 近江】【滋賀県神社誌】【野洲市教育委員会】【野洲町物語】【中主の文化財】より抜粋
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