Japan Geographic

看板考 柚原君子


「分別方法が変更になりました」 

 

(東京都墨田区で見つけた貼紙)

墨田区で見つけた看板……というか貼紙です。

いつも看板を探して上ばかり見ていますが、ふと足元を見たらこのようなものがありました。

解雇された人々がどこかに向かっているような、何かに急いでいく人々が詰ってしまってあせっているような、満員電車に無理やり乗るようなおかしさがありました。

良くみると靴はREGALです。

もし本物でしたら一足2万はするでしょう。

これだけ捨てたら10万以上。

特に古くも無いのなぜ捨てたのでしょうか?

看板探しも忘れて腕組みをしてしまいました。

たとえば、会社ではやり手だけど浮気性の夫に腹を立てた奥さんが、靴を全部捨てて「クッツタレ!」と毒舌を吐いた……。

高額宝くじに当選してREGALよりも良い靴、銀座よしのやで木型を作ってもらって世界に一つだけの自分の靴を一足10万以上で買う身分になれた……。

海外で買ってきたら実は偽物で、そこに穴が開いて水がしみて愛用のGAPの靴下にすぐ穴が開くので靴を捨てた……

などなど考えておかしくなりましたが、道行く人は私がこの靴を拾おうかどうしようかと迷っているようにみえたのかもしれません(笑)。

ちょっと恥ずかしかったか。

ごみを捨てる方法も焼却炉の性能やダイオキシンの問題で、自治体によってずい分と扱いも違ってきています。

近畿圏の義姉の家は氏名入りゴミ袋です。

そして生ごみにちょっとでも発泡スチロールやビニールが混入すると持っていってもらえないばかりか、その場で開封してみても良いルールだそうです。

義姉は「かなわんでぇ」とぼやいていました。

愛知県に住んでいた子どもの頃、家の脇に生ごみを埋めるために大きな穴が掘ってあり、そこは「たまや」と呼ばれていました。

祖母に「このごみをたまやに捨ててりゃぁ」と言われたことを思い出しました。

「たまや」に貯められた生ごみは堆肥になったのでしょうね。

私の住んでいたところは尾張弁でしたが、出雲弁のなかにも「たまや」というのがあって、やはりゴミ捨て場のことだそうです。

分別方法を間違えられた靴たちはちゃんと「たまや」に収まったのかしら。

そして何か違うものに命を変えて貰えていたらステキなのにね、と思います。

 


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