Japan Geographic

看板考 柚原君子


「春夏冬中」 

新宿区のお蕎麦屋さんで見つけました。「飽きない」「空きない」なども含まれている「商い中」つまり営業中という、よくある看板ですね。絵とか文字をしゃれて遊ぶ「判じ物」と呼ばれています。

「判じ物」の起源は平安時代。和歌などに二段三段の謎かけをして遊ばれました。江戸時代に入ると庶民的な遊びの要素でシャレも取り入れられました。また文字が読めない庶民や子どものために絵画化したものも多くあったそうです。板に輪を描いて「湧く」つまりお風呂屋さん。歯の絵の下に猫を逆さに書いて「箱根」。絵は謎かけも多かったそうで、この絵、圀は八方ふさがり。現在では□に斜めの線をいれて「マス」と見せて「ます」の文字を省いている看板も多くあります。

音の不具合から読み替えられたものには櫛屋→「十三屋」と表したものがあります。(くし、のく=九(苦)やし=四(死)が苦労や死を連想するということから、九+四で十三、で「十三屋」と読ませたようです。

スルメ」を「あたりめ」と記した呑み屋さんもあります。これも「する」は「博打で負ける」ことを意味する言葉や窃盗の「スリ」につながるのであまり縁起の良い言葉ではないことから 縁起の良い「あたる」に置き換えて「あたりめ」。同様に「すり鉢」は「あたり鉢」。

隠語のようなものでは質屋さんの七を分解して「一六(いちろく)銀行」。焼き芋屋さんを栗よりうまい(栗より上等)ということで9プラス4で13。十三里。商売敵があちらよりさらにうまいということで十三里半という看板もあるそうですが、半だけ足したことが奥ゆかしくおかしいです。最も一里を足すと意味として嫌われる十四の死が入ってしまうので、半をプラスすることが妥当であったのかもしれません。

「一斗二升五合」もかなり有名ですが、一升ビンは1.8リットルの方がわかりやすくなっていますし、一斗は18リットルのことですから、現在すぐにわかる計算は難しくピンとこない判じ物になっているかもしれません。

ちなみに一斗は、五升の倍で、「ご商売」。二升は、一升升(ます、枡とも書く)という、米を測る器具2つ分で「ますます」。 五合は、一升の半分で、半升、つまり「繁盛」というわけで、「ご商売益々繁盛」というシャレになります。

昔のことですが、田舎暮らしに憧れて群馬の山奥に農家を見に行ったことが有りました。廃屋に近い家で急な段々畑のさらに坂道を上がったところにありました。住んでいた人が逃げ出したような印象の家でしたし、このような廃屋があちらこちらに目に付きました。このとき見つけた看板は「酒屋は七里、天国一里」でした。酒屋に行くより天国が近い高地ということなのでしょうか。この看板だけは撮っておかなかったことが今でも残念です。

判じ物のような文字遊びは英語にも多くあるようですが、英語は「豚10」分かりません。

 


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