Japan Geographic

看板考 柚原君子


「女性専用室内墓所」

 

(JR山手線車両内) 撮影日2016.03.22

とうとうお墓も女性専用が出たのかと驚いて見入った車内広告です。

この世で係累を得なかったご婦人たちが納骨を予約しておくのだと思うのですが、女性専用車両を連想してしまいます。なんだか、死んでも生々しさが残っているように思えたのは私だけなのでしょうか。それともこの広告で安心する人が多いのでしょうか。

『命は終わったら無機質になる。納骨されようが太平洋に散骨されようが、魂は思い出を持ってもらえる人々の間を命とは定義しがたいもので浮遊していく。例えば私が亡き父を思い起こせば、その間だけ父は私の命と共に生きる』、そんな風に思う私としては、何だか生々しい広告に思えたので思わず写真を一枚頂きました。

でも、命の考え方は人それぞれですから、このような業者の是非を問うわけではありませんので、誤解しないでくださいね。

さて、イスラム教やヒンズー教では宗教的な理由で男女の同席が忌避されるので、男性の場合は男性が、女性の場合は女性が遺体を清めるのだそうです。悲しみの場も男女別々で、女性はお葬式のお祈りが始まる前に故人の家に集まって生前を偲んで泣き、親しい男性方は別の場所に集まって思い出話をするそうです。お葬式のお祈りには女性は参加できません。このように宗教的に男女がハッキリと区別をされていても埋葬は土葬で場所的に男女の別はないそうですから、件の広告は深読みをして宗教上の理由の方々を対象にしてあるとしても、やはり違和感を感じます。

女性専用ということなら列車はどうでしょうか。

パキスタンなどでは終日女性専用列車があり、バスなども車内で仕切りが設けられているそうです。日本の場合は勿論宗教的な意味などなく、痴漢などの性犯罪や暴力から女性を保護するもの、サービス向上による女性客の取り込み等が挙げられるそうです。

サービスはともかく痴漢から守るといっても、その当の女性がやたら胸元が開いていたりオシリすれすれまでの短いスカートをひらひらさせたり、開脚で居眠りしたり、はたまた車内で化粧をしていたりすると、女性専用車で女性を守るという意味ではギャップを感じざるを得ません(注!高齢の私のようなおばはんの個人的感想です)。

『女性専用室内墓所』の車内広告の下では若い女性が、いまどき珍しく携帯電話を触るのではなく、文庫本にカバーをかけて、足をきちんと閉じて読書をしていました。真面目な人ばかりで社会を構成するのは無理かもしれませんが、こんな女性がボチボチと増えていけばいいのに、とついでに思った次第。

 


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