Japan Geographic

看板考 柚原君子


 「80出して40で死ぬか……」 

 

所在地:長野県須坂市

看板のように「80出して40で死ぬか 40で80まで生きるか」と問われたら、40で80まで生きたいのは山々だけど、40ノロノロだと車の流れに乗れずに追突される可能性大です。そして、はじき出されて反対車線から来たダンプカーと正面衝突してに半身不随に。そのままの状態で80まで生きたら、面倒見の良い息子だって泣きたくなるし、嫁は完全に怒るでしょう……私だってカメラもって撮影にも行けない半身不随は嫌だ、と答えます。ならば、80出して40って選択肢も短かすぎる生涯で、それはそれでちと悲しい。

しかし、文字の上に描かれているのは群馬県高崎市の達磨大師のようですが、長野県にはPRできる禅寺はなかったのかと、悟りを促せるような意図としては文字の意味に威厳がないなどなど、いろいろな意味で笑えた看板です。

命を終わりとする「寿命」の元の字は「定命」と、うちのお寺のご住職様がおっしゃっています。人はオギャーと生まれ落ちた瞬間に、いつ死ぬのかも決まっているそうです。そういえば、絶対死んでいたはずなのに良く助かったもんだ!という話や、あんなところで一瞬に死ぬなんて信じられない!という生き死にの不思議話は時折耳にします。

先週、92歳の母が体調を崩して入院。100歳までも生きて欲しいとは思いますが、点滴が入らず青黒くなった皮ばかりの手と、歯のない口を半開きにして眠っている母を見ると、定命まで生きなければならないことが可哀想になります。80出しても40出しても、人の生き死には難しい……。

 


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