Japan Geographic

看板考 柚原君子


 「官公庁マリッジ」  

「官公庁マリッジ」(消火栓標識に付いた看板)

所在地:東京都中央区銀座

看板を見上げてしばらく呆然としました(笑)。だって、消火栓のありかを示す赤いポールですからてっきり東京消防庁が建てているもの、つまり公共物のような気がして、それに婚活の看板がぶら下がっている!と思ったからです。

しかも「官公庁マリッジ」って、できすぎじゃなぁい?と呆然状態は続きます。

東京消防庁が庁をあげて官公庁マリッジ……つまり公務員が結婚をのぞむ婚活・コンカツ活動に踏み出したのか……消防庁の結婚できないお兄さん方が、共同で看板をかけたのかと思ってしまいました。銀座のみゆき通りの信号の角。振り返り振り返り信号を渡ったので轢かれそうになりました(笑)。

消火栓の有り場所を示すポールやそれに架かる看板については、ご存じの方もあるかもしれませんが、私はただただビックリポンで帰ってきたので、早速調べました。

建っているポールの正式名称は『消火栓標識』。一般社団法人 全国消火栓標識連合会(内閣総理大臣・府益担第2626号)が管理している物であると言うことが解りまました。全国にはそれぞれ別の組織があるようですが、東京の場合は江東区平野にあるとのこと。そういえば……昔江東区に住んでいたとき、このポールが地面いっぱいに寝かされている所を見たことがあるような……。

一般社団法人は利益を追求してもいいけれど株式会社のように分配してはならない、儲けは理事他の会員で分ける、というルールがあるそうで、需要が多ければなんだか美味しそうな職業のような気がします。

看板選別審査はあるそうで、医療関係の特に歯医者さん、それから質屋さんが多いそうです。道路上に出せるというメリットがあるので時間貸し駐車場や、マンション販売・賃貸などの不動産関係、パチンコ店などもあったりするそうです。

広告料はといえば、デザイン・看板製作代、作業代や税金などすべてを含めて、税別で一年間で大体65,000円。3年間が権利有りの期間だそうですが、中には30年も掛かっている看板もあるとのことです。

公道上に出せるのと、かなり安価な勘定になるので、看板を掛けたい競争率は激しいのではと想像できます。看板広告料は社員(会員?)の給料や、標識作成・維持・管理に充てているとこの社団法人のHPにありました。

消火栓は火急の時には絶対に必要な物で、遠くからでも見えなければなりませんし、もちろんその脇に駐車をすることは法律で禁じられています。そのくらい重要な場所を示す標識ですが、なんだか俗っぽい看板が掛かっていて面白いなぁと思いました。

ちなみに、消火栓標識にかけられる看板はタブーがあり広告全面を赤色、黄色、黒色にしてはならないそうで、当該看板はなるほどね、クリアーしています。ついでながら「官公庁マリッジ」は公務員と結婚したい人や、公務員自身の方々が登録できる事を特出とした民間の婚活の会社でした。

消火栓が必要になる火事は避けたいですが、すべての若者は恋の炎に身を投じて、結婚率をあげて頂きたいですね。この国の未来を維持していくためにも。

 


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