Japan Geographic

看板考 柚原君子


 

「ズロース」 

撮影日:2019年3月
撮影地:岐阜県中津川宿

年配の方向けの洋品店にあった看板。今では全くの死語である「ズロース」という言葉。生きていたのねぇ、と思わず駆け寄りました。
着物を着ていた時代の男性は裾をめくり上げて走ったり、裾を帯に挟んで農作業をしたり、侍であれば股立ちをして決闘をしたりするからでしょうか「ふんどし」という下着がありますが、女性はノーパンで着物の下に着用したのは腰巻きのみ。和装の帯は胸下から腰骨あたりまであるので、腰にひっかけてはく下着は元々無理だったのかもしれません。

ズロースの原語は英語の「ドロワーズ(drawers)」です。英文字をよーく見るとズロースと読めます(笑)。西洋人形がドレスの下にウエストも股下もゴムで可愛いフレアーを出しているそんな雰囲気な下着がドロワーズです。いずれも「ズ」の付く複数形。履くときの足を通しますが足は2本なので複数形になる、というのもおもしろいです。

私の子ども頃もまだズロースと呼ばれていました。その上に着るスリップのような下着はシミーズという呼称。木綿で肌触りが良く、レディになった気分で好きでしたが、これも今は死語です。シミーズの語源はフランス語の「シュミーズ(chemise)」。

広島の原爆ドーム記念館に、被爆した少女の焼け焦げたシミーズが飾られていて、青春も知らずに亡くなっていった少女の在りし日の姿を想像して胸が痛んだ記憶があります。

「ズロース」の後、下着の名前は「パンティ」、「ショーツ(下着業界の販売戦略語が定着したもの)」へと変化して、今ではインナーという言葉も使われます。
男性の下着を指すパンツという言葉も昔は下着のことで、上にはくのはズボンといったはずですが、今では男性女性ともにパンツといわれるとズボンを指すことが多いようで、時代と共に変化していく呼称はおもしろいです。

「ズロース」の言葉が地方で看板として堂々と流通していたのを見たのは感動物でしたが、ズロースの前に書かれている「2P」とは、さて、なんでしょうか。しかも死語に等しいズロースが解る購買層向けの看板に今流(らしい)の2Pの表現がわかりません。2P+ズロースの不釣り合いは十分に楽しめますが、いつか2Pの真相を確かめに中津川宿をもう一度歩いてみようと思っています。

 


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