「つとっこ」
所在地:長野県南木曾妻籠宿内
柿の字の右側は『市』ですが、元の字は『柹』。右側の字は「し」と呼ばれるもので、『一番上』を意味します。柿は木に成る一番上ではなく、柿から渋を取っていた時代、一番上に渋がありすくい取っていたから。
余談ですが同じ意味で「し」が付けられている『姉』も女の一番上という意味になります。
妻籠宿の秋の風物詩と言われる「つとっこ」を先日の街道歩きで初めてお目にかかることができました。柿が秋の陽に照らされて、藁の間から笑っているように見えました。ほどよく干されて食べ頃になると、抜いて違う柿を入れるということもできるようです。
つとっこは柿を藁で包んで干してあります。それ以外の干し方はどの地域にも見られる皮をむいて干す方法と、枝ごと切ってきてそのまま干す方法とがあるそうですが、街道筋では皮をむいて干してあるのは見られませんでした。
藁の隙間から見える鮮やかな柿色はとてもきれいで、まさに秋を楽しむことができました。
藁に包まれた柿の種類は渋柿で百目柿。命名は昔の尺貫法で百匁から来ていて375グラムくらいの大きさだったからだそうですが、現在は結構大きく百匁を超えて500グラムくらいの大物もあるそうです。
類似のものでは、つとっ子……秩父地方特産でトチの葉で餅米などを包んだ保存食で朴葉などでも作られるものがあります。その他の地方によっては、つとこ、つつっこ、つっとこなどの言い方もあるようですが、昔は冷蔵庫などありませんから、風通しの良い場所に吊して保存したからなのでしょうね。
当該看板はお年を召した方が書かれたような、なつかしく温かい文字看板でした。
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