Japan Geographic

看板考 柚原君子


 

 

「たばこは心の日曜日」

看板考では2012.05に「lucky strike」で、2015.07に「交差点の角のたばこ屋さん」という題でタバコに関する話題をしていますが、それに続いてのタバコ関連です。タバコ全盛時代は「今日も元気だタバコがうまい」、「タバコは動くアクセサリー」、「贈り物にたばこ」などというキャッチフレーズが多くありました。
今にしては珍しいフレーズの看板場所は板橋区南町のとある十字路の角。出窓の細い面にキャッチフレーズを見つけました。
「タバコは心の日曜日」とあり昭和の遺物を見つけたような気持ちで見とれました。

タバコ全盛時代には映画の中でカッコ良い俳優に吸わせたり、テレビドラマのシーンで喫煙場面があまりにも多いからと不思議に思うとスポンサーがタバコがらみだったり、と生活の場に当たり前のようにあったタバコですが、今から25年前の平成半ば頃からテレビによるタバコCMが規制されるようになり、町の一角やレストランでは分煙となり、それは道でタバコを吸わないという市町村の条例発令までに至り、喫煙者にはかなり厳しい現在になっています。

今では害有る嗜好品のくくりの中にあるたばこですが、もともとはマヤ文明において神の祈りにかかわる宗教上のものであったり、病気の治療に使われたりと、鎮静剤、安定剤なども含めて神聖な部分が多かったようです。
タバコという名称は、吸う(あるいは嗅ぐ)道具のパイプの名前だったのですが、新大陸発見のコロンブスがたばこの葉の方と間違えたために定着したとか。毒の要素と思われるニコチンはフランス大使のジャン・二コーが頭痛持ちの自国の皇太后にたばこを嗅がせたら頭痛が治ったところから宮廷内で吸ったり嗅いだりの習慣が定着して「ニコチン」の名前があるという、いろいろおもしろい話もあります。

「たばこは心の日曜日」などというキャッチフレーズも、日曜日は安楽の日ですから、吸えばゆったりとした気持ちになれる嗜好品のお薦めということなのでしょうね。

たばこは今は「JT]ですが、もとは「専売公社」といっています。
近代化を伴なった明治維新後は、国がこれまであった地租の税金収入だけでは成り立たなくなり、国としての財源確保の必要に迫られ、専売公社にして利益が国の元にダイレクトに入るようにした経緯があります。たばこの葉を国が買い上げますので、どこの農地もたばこ葉だらけだった時代もあったようです、
現在はJTとの契約農家のみですが、たばこの売り上げは減り、2021年12月のニュースでは作付け農家が47%減少とでていました。

吸わないに越したことはないという現在のたばこの位置。コロンブスの時代には解らなかったことですが、ニコチンやタールの有害物質がはいっているたばこは、体内の活性酸素を過剰にしてしまうので、細胞が傷つけられ障害がおこり、細胞のかたまりで出来ている動物としては悪い変化が起きることになる……とまあ、平たく言えばそのような理解の現在です。

吸っている人は目の敵にされて気の毒な時代になっていますが、既に虜となっているたばこを、震えながらガマンして生きて健康で長生きして聖者として暮らす味気なさは、吸わない人には想像ができません。せめて副流煙まき散らさず、囲みの中で吸って心の日曜日を堪能して頂ければと、盛り場の囲みのモクモク上がる煙の外を大曲りにして通る私です。

……ソンナ私デスガ、ミーハーデモアルノデ、タバコヲ吸ウキムタクハ、チョットカッコイイトハオモッテイマス……


 


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