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街並学 まちおこし学 事始め
Academic view of townscape

街並とは
Introduction

瀧山幸伸

Apr.2011

「街並学」とはずいぶん大仰な表現だが、学問としてまだまだ未開の分野であるので、将来の研究者のために拙論を記しておきたい。


■ 「街並」の用語の定義

「街並」を学校で習った城下町や宿場町などに限定してはいけない。
世間一般には「街並」よりも「町並み」という表現が多数を占めているが、 「街並」も「町並み」も、英語のboulvard(大通り),street(通り),pass(小路)等での建築物が連続した景観(シーケンス)を暗黙のうちに想定している。
しかし、それでは街路景観以外のもの、例えば「鯉のぼり」の歌に登場する「甍の波」のように市街地全体の俯瞰風景、あるいは「町」ではない農村、棚田、植林地、建築物を伴わない道路や鉄道や水路、工場群などの産業景観は除外されてしまう。
そこで、本論では、景観を幅広くとらえ、「自然が人の手で影響を受けた景観」すなわち「人文景観」を総称して「街並」という用語で統一している。
「人文景観」には、フンボルト以降ドイツ地理学界が中心となって研究してきた「土地利用」の概念が根底にある。

最近では文化財の一分野としても「文化的景観」が評価される時代となった。文化庁では「文化的景観」とは、「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの」と定義しており、選定対象として、農耕、採草放牧、森林、漁ろう、水利用、鉱工業、流通往来、居住に関する景観地を提示しており、人文地理的概念に近いが、「文化的価値」を評価しているので対象範囲はいささか狭い。
極端な例だが、「俗悪な街並」や「醜悪なネオンや看板」、あるいは「工事現場の青テント」など、明らかに文化的価値が見られないような景観は文化庁では扱わないが、街並学ではそれは社会システムの病理の一種であり、研究対象となる。

文化庁が「重要文化的景観」を選定する基準。


(1)水田・畑地などの農耕に関する景観地
(2)茅野・牧野などの採草・放牧に関する景観地
(3)用材林・防災林などの森林の利用に関する景観地
(4)養殖いかだ・海苔ひびなどの漁ろうに関する景観地
(5)ため池・水路・港などの水の利用に関する景観地
(6)鉱山・採石場・工場群などの採掘・製造に関する景観地
(7)道・広場などの流通・往来に関する景観地
(8)垣根・屋敷林などの居住に関する景観地


前項各号に掲げるものが複合した景観地






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