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徳島県三好市 大歩危 小歩危
Oboke Koboke,Miyoshi city,Tokushima

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Mar.2012 瀧山幸伸 HD video

 大歩危は、徳島県三好市の一級河川吉野川(よしのがわ)の中流にある。吉野川は、「四国三郎(しこくさぶろう)」の別名で知られる全長194キロメートル、流域面積3、750平方キロメートルの愛媛―高知県境の瓶ヶ森(かめがもり)(標高1,897メートル)にその源を発し、東流しJR土讃線(どさんせん)豊永駅(とよながえき)付近で北に向きを変え四国山地を横切る。その後阿波池田付近で再び東に向きを変え、中央構造線に沿って徳島平野を流れ紀伊水道に注ぐ。その流路は、四国の地質と密接に関連している。
 一般に中央構造線以南の四国の地質構造は東西の走向を持っていることから、四国山地を南北に横切る吉野川上流部では、吉野川の侵食により地質構造の配列が明瞭にみられる。吉野川が峡谷をつくる大歩危付近では、関東から九州まで日本列島を縦断して分布する三波川変成岩が連続的に露出する。三波川変成岩は一般的に「三波石(さんばせき)」と呼ばれ、徳島県では「阿波(あわ)の青石(あおいし)」と呼ばれている。石材としても著名であり、大歩危はその有数の露出地である。
 三波川変成岩は、中生代ジュラ紀から白亜紀にかけての海洋プレートの沈み込みにより陸側に付加されて地下深くに押し込まれた地層が、高い圧力のもとで再結晶したものが地殻変動により上昇して、地表へ現れたものである。
大歩危付近の三波川変成岩は、ドーム状の背斜構造(はいしゃこうぞう)という褶曲構造を示している。今回の指定対象地では、背斜構造の中心部に近い部分に原岩(げんがん)の年代(変成作用前の年代)が新しく変成の程度が弱い砂質片岩(さしつへんがん)や礫質片岩(れきしつへんがん)などが分布し、背斜構造の中心部から離れた部分には泥質(でいしつ)片岩や緑色(りょくしょく)片岩などの変成度の高い古い岩石が分布し、見かけ上新しい岩石と古い岩石の位置関係が逆転している。
 近年の研究によれば、大歩危を含む三波川変成岩の原岩(げんがん)の年代は、見かけ上上位の変成岩がおよそ1.3億年より古く、見かけ上は下位の変成岩がおよそ0.92億年より新しい年代を示すことが報告され、従来、三波川変成岩として一括されていた中に、より新しい変成作用の時期があったことが提案されている。
 この見かけ上の年代の逆転は、次のように理解できる。すなわち、海洋プレートの沈み込みに伴い、次々と新しい地層が低角度の衝上(しょうじょう)断層(だんそう)を境として下位に付加され(底付け)、それが地下深くに押し込まれて、高い圧力により変成岩となる。さらに四国山地を形づくる原動力となる隆起の進行により、見かけ上は上位にあった古い変成岩は浸食され、見かけ上は下位にあった大歩危を構成する新しい変成岩が地表に現れたものと考えられる。
 大歩危付近に見られる砂質片岩は比較的変成度が低く,もともとは水流で運ばれたことを示す堆積構造(斜交層理(しゃこうそうり)やチャネル構造)が見られること、またこの地域としては初めてとなる含礫片岩が発見されるなど、当時の海洋プレートの沈み込みに伴う海溝ないしは海溝斜面(かいこうしゃめん)付近で堆積した陸源堆積物を起源としていることを示唆している。
 大歩危の三波川変成岩は、海洋プレートの沈み込みにより付加された地層から構成されるわが国の成り立ち、すなわち付加された地層がより以前の地層の見かけ上、下位に付け加わり、地下深くに押し込まれて高い圧力で変成し、やがて地殻変動により上昇し、より古い地層の浸食により地表に現れる、というプロセスを知る上で、重要な地質現象を示すものとして、極めて重要である。(文化庁)
          

            



Dec.2007 瀧山幸伸

大歩危
Oboke

  





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