JAPAN GEOGRAPHIC

東京都大田区 羽田

Haneda,Ohtaku,Tokyo

 
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July 27,2019 柚原君子 source movie

羽田神社祭礼

ヨコタ担ぎというおもしろいかつぎ方があるというので行ってきました。

0、羽田神社

所在地:東京都大田区本羽田3-9-12(京浜急行電鉄「大鳥居駅」より徒歩5分)

羽田神社は羽田空港を含む一帯の総鎮守。

創建は鎌倉時代。羽田浦の水軍で領主だった行方与次郎(なめかたよじろう)が牛頭天王(ごずてんのう)を祀った事からとされ、今日でも羽田神社は「てんのうさん」と親しみを込めて呼ばれる。徳川時代には、徳川家、島津家、藤堂家などに厚く信仰された。

御祭神は「須佐之男命(すさのおのみこと)」と「稲田姫命(いなだひめのみこと)」の二柱・ご夫婦の神様。羽田空港からの航空安全祈願も多い。(羽田神社HPより抜粋)

羽田神社は一の鳥居、二の鳥居の間隔もきわめて短かく境内は狭いです。近隣から集められた鳥居付きの小社も数社祀られてあり、それぞれに丁寧な説明板があります。また、現在は危険なため登山は禁止ですが区の文化財指定を受けた富士塚もあります。全体的に素朴なイメージです。

羽田神社の祭礼は毎年7月の末。14町会14基の神輿がヨコタ担ぎで練り歩くのが特徴です。東京都内では「ヨコタ担ぎ」が見られるのは珍しいことです。ヨコタ担ぎは波に揺れる船を表していて、神輿が激しく傾く担ぎ方で、羽田地域が漁師町であったころを彷彿とさせます。

お祭り当日は宮入として町会神輿が「ヨコタ担ぎ」でもんだ後にお祓いを受けて、再び町に戻っていきます。

連合渡御当日は弁天橋の赤い鳥居近辺に氏子にあたる羽田空港から、全日空・日本航空の客室乗務員等が制服で参加して飲み物を配ったりします。また沿道には大漁の旗がはためくなどその風景は他の祭ではあまり類を見ないものになっています。

                                               

1,神楽殿

祭当日は神楽殿では神楽が催されていました。お猿さんと天狗さんのやりとりはおもしろそうですが、見ている人は少なく、天狗さんも脇を走るトラックの運転手に向かって手を振ったりしていて、村の祭り的な素朴感が漂っています。神楽神事の下で、祭を楽しむ親子の対比がおもしろいです。

              

2,祭準備の町風景

①お囃子台をつくる……高速道路下でお囃子台が作られていました。竹を切り細縄で結わき幕を張っています。すぐ脇は羽田の海に続く川があるので、汐の香りが少しします。

       

②写真撮ってるの?と訊かれたので、もうじきお祭りでたのしそうですね、と言いましたら、「役に立たない者ばかりが座る椅子だよ!」と笑い声の明るい返答でした。

いえいえ、まだまだ、祭は長老たちが居なければ成り立ちませんから、と心で声援しました。

      

③横道から黄色の半纏と鳥居が見えます。神酒所も有る様子ですので、行ってみました。

下仲町会の山車の飾り付けが行われていました。乗り込んでいる人達も自分の草履を抱えて嬉しそう。お年寄りの様子ですが、どっこいこういう方々が神輿担ぎになると俄然“粋”で”お上手“ですから、う〜ん、この上品なおひげのおじさんを覚えておこう!

小さな赤い鳥居の奥には「鴎稲荷神社」。この辺りは江戸時代には羽田沖で捕れた魚を江戸に運ぶ路で、七曲がりの一つであったそう。その魚を目当てに鴎がたくさん集まっていたそうで、それはまた大漁の印や願いでもあったそうで、漁師町の名残りの鴎稲荷神社です。

                 

④古い建物がありました。銅板のような袋戸が左右に付いた家。2階の窓はステンドグラスで大正期の建物の感じですが、よく分りません。製綿組合のブリキ標が掲げられていました。

      

⑤前河原町会さんのお囃子隊の練習。ひとしきり音合わせの後、背中に笛を挿して、笛吹さんは帰りました。明日の連合渡御に供えてでしょうね。

    

⑥夕方の町内流しと明日の連合渡御のために、西町の神輿は飾り付け中。

中央の大きな鳥の鳳凰(ほうおう)の口に稲穂を噛ませます。鳳凰は想像上の鳥で、頭はニワトリ、首はヘビ、あごはツバメ、背はカメ、尾は魚に似て五色の羽を持って五音の声を有するそうです。

青年でもない、言ってみれば長老との間の中堅処のおじさんが(半纏は青年会だが)、鳳凰の飾り付けを一所懸命しています。下で見上げて指示しているのは長老格。

「おれ嫌いなんだよな、その稲穂が下を向いているのって。もっと稲穂を全部見えるようにして、そのニラはよ後ろ側に来るようにさぁ」

……えっニラ?とニラに反応した私。稲穂の後ろにある青々としたものはニラだったんだ……中堅処は長老に

「こうですか?」

「違うッてんだろう、もっと上向きだよ、それに傾いているし」

土地柄なのか言葉が悪いけど長老は笑いながら言ってます。黙って汗をかいて稲穂ニラを直す中堅処。こういう所が祭って良いなぁ、って思います。揺らす神輿ですから稲穂が落ちないようにするのは大切ですが、他所曲がっていてもヨコタ担ぎで激しく揺らして傾ければ、ニラが前に来ても仕方がない……と中堅処は口答えしたりしません。

黙々と作業を。ようやく許可が出て中堅処が降りたその脇では若手の青年が榊を丁寧に和紙で結わえていました。連帯感がある町内っていいなぁ、と見惚れました。

             

⑦メイン通りでは提灯の飾り付けや、担ぎ手が脚絆(きゃはん)の具合や足袋のこはぜを確かめながらあちらこちらから駆けつける様子が見られます。足袋の上にはいているのはハイソックスの様なもの。脚絆です。ふくらはぎの張りを防ぐサポーターの役目のようです。三社や鳥越や深川のお祭りでは見かけない代物。是もある意味羽田祭の特徴でしょうか。

特徴といえばはちまきも。手ぬぐいや豆絞りで細くクルクルと縄状にして頭に巻くはちまきですが、ここ羽田祭では大体の人がタオルを”ダバ!“と巻いています。太めのタオルのはちまき!

町会会館ではご婦人たちがなにやら準備中。子どもたちに配るお菓子であったり、宵宮への差し入れであったりするのでしょうね。良いなぁ、婦人会の影の活躍。

                                           

3,注連縄・結界

お祭りでは家の入口や神酒所に注連縄を飾るところが多いですが、羽田祭では町内の路地から路地へ横町から小路へと、町内くまなく渡るように、注連縄が張り巡らされています。こんな所にまで?と思うような大通りのガードレールの端までも。

注連縄に下げられた白い紙(しで)は、雷や雨を表すといわれて農作物の豊穣を願うところから来ているようですが、お祭りに於いては神様が降りてこられている聖域を示しているとのこと。それと同時に地域の連帯を示しているような感じもします。細い路地の奥の自転車の脇まで張り巡らされている注連縄が揺れて、その前を祭半纏の後ろ姿が行きます。絵になりますねぇ。

       

4、子ども神輿宮入

祭準備の風景を撮っていたらまた羽田神社に戻ってしまいました。境内には子ども神輿が宮入したようです。小さな子どもたちは大人たちに手伝ってもらいながら神輿を傾け波を表そうと必死です。反対側に傾いた時に持ち上げられる方の子どもたちは地面から1メートルくらい足が上がっています。ほんとうに波が来たときに持ち上げられる感じ。子どもたちは嬉しそうです。大人は大粒の汗!

                        

5、神輿渡御待ち

日が少し陰ってきて夕刻。これから町内を練ったり宮入をしたりする神輿の周りに、人々が集結してきました。

令和元年を祈念して「奉祝 御大典 天皇陛下御即位」の旗がどの神輿にも見られます。70代と孫と娘と女三代がそろった神輿も。連合会長は運動靴!まだ準備前なのでしょうね。小学生でも高学年はもう大人神輿の方にまわる子もいるようで、お揃いの半纏に半だこ。出陣前の乾杯をしているグループも。お水とジュースでした。酒気帯びは禁止なのでしょうね。

しっかりと稲穂をくわえた鳳凰の凜々しい顔。稲穂に国旗の日の丸を飾っている神輿もあります。日本人は奥ゆかしいのか日本人である誇りをあまり口にしませんが、こんな風に国旗が掲げられているとやっぱり嬉しい!

人々のそろっていない半纏が初めは気になりましたが、どんな形でも参加OKという意味なのでしょうね。見慣れてしまえば思い思いの服装で祭を楽しむ優しさが感じられます。

                                       

6、表敬訪問

渡御の出発時刻にまだ間があるようですが、高速道路の向こう側から表敬訪問神輿がありました。隣の町会に挨拶代わりに、わが町会のヨコタ担ぎを見せようということのようです。

先導は徒歩のお囃子。その後ろには神輿を先導するマイクを持った人がいます。

棒に押し合いへし合いの人で担ぐようではなく、優雅に担いでやってくるという感じですが、先導のマイクの人が大きな声で歌い始めると様子が違ってきます。

♪ 羽田囃子で 神輿をあげりゃ ヨコタヨコタの勇み肌 

 はいっ、 こりゃこりゃ こりゃさっさ

 ヨコタでおいで お尻を振って おいちにのさんし ♪

今までに聞いたことのない文言。

お尻を振っておいちにのさんし♪のかけ声を合図に、神輿を小刻みに振るわせた後に、片側の担ぎ棒を中腰になって下側に引っ張り傾けます。

傾けられた側は足が宙に浮きます。それをまた渾身の力で引き降ろしてこちら側で傾けさせます。

左右交互に上がったり下がったり飛び上がったり引き降りたりと大波小波を繰り返します。その間のかけ声は「よいさ」だったり「ほいさ」だったりします。

20回くらい揺らした後に、マイクを持ったリーダーが、

♪ ヨィ ヨィ ヨィ ヨィ ヨィ ヨィ ♪

と言うと神輿は水平に戻され、「ヨイサァー」のかけ声で担がれて進みます……がまたすぐに、♪お尻を振って♪が入ります。付いて歩く観客もにこにこ。

渡御前の表敬訪問でしたので、「ありがとうございました!」の声があちらこちらで上がりました。

                            

7、前河原町神輿

さて、いよいよ渡御の始まりです。まずやってきたのは前河原町神輿です。

高速道路の下で右折しますが、どの神輿もこの辺りで一度ヨコタ担ぎをします。直進する方向は他町会にあたりますので、挨拶代わりもある様子。

しかし、意味が分らないのは担ぐ前にリーダーが歌を歌うことです。マイクを担いでいますのでそれはそれは大きな声です。歌われるのは大体が「東京音頭」です(もしもしか亀よ亀さんよ♪バージョンもあるそうです)。

それもあまりお上手ではない(笑)「東京音頭」。

そしてその歌が終わると、

♪ 羽田囃子で 神輿をあげりゃ ヨコタヨコタの勇み肌 ♪はいっ、 こりゃこりゃ こりゃさっさ♪ヨコタでおいで お尻を振って いちにのさんし ♪

という掛け声とともに神輿のローリングが始まります。

歌の歌詞の中にヨコタ担ぎの意味があるのかもしれませんが、どのようなつながりでここで東京音頭が歌われるのか分りません。音調が少し外れたりもします。各町会で歌のうまい人そうでない人があるので、これまたおもしろいです。外していると♪ 外したなぁと神輿の周りの人もニヤニヤしています。

             

8、旭町神輿

こちらのマイク持ちのリーダーは顔中いたずら書きだらけ。神輿担ぎの中でも帽子をかぶっている人もいて、足袋も半纏もなにもかも不揃いも不揃い!!でも、慣れてくると個人フッション祭参加も楽しいなと思えてくるから不思議です。

揺らしかたは一番激しく、女性の方など飛んで行ってしまうのではないかと心配するくらいです。おかげでピントの合った写真は有りません。これだけ飛べばふくらはぎサポーターが必要だと分ります。

            

9、上東町神輿

他に比べるとおとなしめでした。

      

10,稲荷前町神輿

鴎稲荷のある一帯の町の神輿です。他神輿に比べて子どもの数も多い雰囲気。神輿が波に揺れて浮いた時にぶら下がっていた子どもの足が地面からかなり離れていた。後ろの付き添いの大人がそれとなく守っていた……大人の神輿に子どもが入れるなど他の祭ではないことです。良いなぁ、この連帯感!

            

11,横町神輿

こちらの神輿も必死でしがみつくお嬢さんや小学生がいます。神輿を引き寄せて下げる後ろ姿もしっかり腰が入った本物。こういう地域の中で育つ子どもたちは今の東京ではうらやましい存在です。

                

12、西町神輿

お囃子付きの神輿がやってきました。今までは高速道路下で通過していく神輿を撮っていましたが、もう残り少ないようですので付いていくことにします。どうやら羽田神社に向かっているようです。

何度かヨコタ担ぎを繰り返して大師橋まで来ました。先導されて羽田神社に入るのか……と思ったら神社を通過して大通りを横切って町会の方に帰ってしまいました。

                                                

13、仲羽田町神輿

西町神輿が行ってしまったのでアララって思っていたら、大師橋の方に一つ見えています。仲羽田町神輿です。遠くからでも跳ねたり沈めたりしているのが分ります。子どもも交じっています。

宮入しました。可愛い子どもも数人いたので、神輿の下にカメラを向けました。掴まれない子がこちらを向きます。……担ぎ棒が子どもの手のサイズに合わないのでしょうね。両手でなんとか懸垂のようにしている子もいますが、あきらめて手放す子も。

カメラをもぐらせてみると足ばかり撮れました。大人の足元も装束もバラバラでおもしろいです。運動靴、サンダル、黒足袋、白足袋、雪駄も。

笛を吹いて参加する女子もいます。

境内で何度かヨコタ担ぎを披露したあとに一本締め。このあと宮司さんがお出ましになりお祓い。そのあと宵闇迫る中、神輿は町会に戻っていきました。

                                                            

14,羽田沖風景

午後ですが、祭準備中の町を撮ったあとに、渡御までに時間があったので川べりを歩いて見た景色をまとめてみました。

大師橋を渡るともう川崎です。右前方に見えるモスクの様なものは川崎大師の自動車をお祓いする堂のようです。大師橋の羽田側に飛行機の離陸が見えます。一度川べりに降りて土手道を歩きます。

水門の手前には漁船や屋形船が舫われています。

「多摩川八景 多摩川河口」という看板が立っています。山梨県塩山市の笠取山を起点とする多摩川は138キロの旅を経てここが終点の河口となるそうです。その横には、かつてここに羽田の渡しがあったことを示す石の碑があります。今から80年前になくなってしまった「羽田の渡し」ですが、江戸時代当時は羽田漁師町と川崎の上殿町を結び、小島六左衛門が営んでいたので「六左衛門の渡し」と言われていて、川幅は狭く「お〜い!」と呼ぶと声が届いた、と記載されています。

さほど遠くないところに羽田国際空港が見えます。次々と飛行機が離陸していきます。離陸滑走路に向かうのでしょうか緩やかに向きを変えている飛行機も見られます。

黒い機体が上がってきました。実に黒い。スターフライヤーですね。まるで鯨が空に登って行くようです。海風。潮風に吹かれて機影を撮影。

今年は7月いっぱいまで長い梅雨でしたが、今日の羽田の空は夏到来の暑さと青空と白い雲でした。

                                    

羽田空港

                                                                                          


Oct.2010 野崎順次

東京都大田区羽田空港2−6−5

東京国際空港(羽田)新国際ターミナルビル

(New International Passenger Terminal, Tokyo International Airport, Ohtaku, Tokyo)

撮影日: 2010年10月29日アプローチ

        

2F 到着ロビー

    

3F 出発ロビー

                                    

4F Edo Market Place、江戸小路、江戸前横丁、江戸舞台

                                      

5F 展望デッキ

                


撮影:高橋明紀代

7月下旬の夏祭り

御神輿を担ぐ様が勇壮で「ヨコタ担ぎ」といい、御神輿を上下に激しく揺さぶることで有名。

 


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