JAPAN GEOGRAPHIC

和歌山県古座川町 植魚の滝・ハリオの滝

Ueuonotaki/Harionotaki,Kozagawa town,Wakayama

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Feb.13,2020 瀧山幸伸

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現清流古座川の源流域にある植魚の滝。なぜこの滝に行ったかというと、熊野ジオパークのポスターに絶景風な写真が登場していたからだ。だが、とにかく滝の情報が少ない。情報が少ない理由はおそらく、アクセスが悪く危険、現地の滝付近も危険、毒蛇や毒虫で危険、等々だからか?それにしても写真はとても美しかったので,行かないという選択肢はない。限られたネット情報をもとに、水量が少なくマムシやヒルに出会わない冬の時期に訪問することにした。

ところが、まずアクセスでつまずいた。伊勢方面から現地に入るため、ナビとネットでルートを調べると、ナビは南の串本方面から古座川を遡って大塔山まで行けという。大きく弧を描くルートで、時間がかかり距離も遠い。とにかくナビの言うことは信用できない。災害や積雪や事故による通行規制などにうまく対応していないことが多いからだ。一方、世界中が利用している某マップアプリは、ビッグデータを解析しているせいかかなり賢くなっている。だが、ビッグデータが多い都会なら良いのだが滅多に車が通らない辺地の林道などではやはりあまり信用できない。アプリは、新宮から熊野川を遡り、赤木川沿いに県道を通り、足郷トンネルを抜けて現地に行けという。確かに距離も時間も節約になるルートだが、、、訪問は2月の中旬なので、いかに温暖な熊野で今年は暖冬だといっても、積雪や洪水によるの路肩崩壊やがけ崩れなどで峠越えが難しいかもしれない。ダメだった場合のフェイルセーフのルートが無いので、アプリのルートも軽々とは信用できないのだ。まず、和歌山県の道路情報ページを開いても通行規制情報はなかった。とにかくこの県道ルートの情報は無いに等しい。ようやく数年前にドライブした人のつぶやきのような情報が出てきたが、それによると、舗装されてはいるものの路肩狭小らしい。自分は普段未舗装で路肩狭小の超悪路ばかり走行しているので、舗装されているのならこのルートで決定! ところが現実は甘くなかった。この県道は車幅ぎりぎりのうねうね道で、転石が路面にたくさん落ちていて走りにくいうえに、ハンドル操作を油断すると谷底に転落するような地獄の道だった。結局慎重に運転したのでナビのルートと同様かそれ以上の時間がかかってしまった。

やれやれ、ようやく植魚の滝入り口に駐車できた。ここは大塔山登山路の始点にもなっている。ここからは川沿いに徒歩30分程度らしい。喜び勇んで歩き始めたが、2分ほど歩いて目の前に小さな滝が現れた場所で愕然とする。洪水のせいか歩道はそこで途絶えており、水量もかなりある川を渡渉するのは危険とまでは言えないがかなり勇気が要る。連れはここで引き返したいと言うので、やむなく一人で靴を履いたまま水に入り先に進んだ。水は思ったほど冷たくないのだが、とにかく水中に転がる石枕のような丸い石がつるつる滑り、勢いのある流れに足をすくわれる。ちなみに丸い石が滑るのは熊野ジオパークならではの地質がなせるもので、詳しくは潮岬にある熊野ジオパークセンターで学ぶことができる。

都合6回川を渡り、ようやく植魚の滝にたどり着いた。この滝は兵庫県新温泉町のシワガラの滝とほぼ同じ壺型の形態で、おそらく元の流れが甌穴と同様に削られて出来上がったものだろう。この滝の形状ゆえに轟音は独特の響きがあり、滝も滝壺も間近まで進まないと見られない、神秘さに満ちた滝だ。

ところが滝入り口から滝壺までのアクセスは極めて悪い。今までの渡渉とは違い、水は深く、両面の崖に足場がなく、つるっと滑って川に投げ出されそうになる。さらに悪いことに、空からはバシャバシャと支流の水が降ってくる。ここまで来たら、えーいままよと、下半身水に浸かり最後の難関を突破した。

その先にあったのはまさしく神秘の光景だった。これは確かに絶景で絶音響だ。前を落ちる勢いの良い水とブルーの滝壺。水量はそれほどでもないが独特な反響音。両側は切り立った絶壁で、滝の上からは午後の陽が射して神々しい。天空には岩の割れ目から青空が見える。振り返れば下流の両面も絶壁。とにかく全周カメラが必要なくらいダイナミックで、加えて壺型構造の滝がもたらす独特な音の迫力がすさまじい。水に浸かったままでこの景色と音をフルサイズ12ミリ相当の超広角レンズとプロ用マイクで収録した。

ここまでは大成功だったのだが、、、

念願の滝を間近に眺められ、うまく撮影できた嬉しさに浮足立っていたのか、帰路、滝から数十メートル離れたなにげない緩斜面でつるっと足を滑らせてしまい倒れそうになった。慌てたのか姿勢の立て直しに躍起になり、数歩で小走り状態に加速してしまった。あー、このまま左側の川に滑り落ちるのかな、と嫌な気持ちが頭をよぎった。目の前に現れたのは1.5メートルほどの小さな崖だったので、助走がついたまま反射的にこの崖を飛び降りてしまった。着地した瞬間、あーやれやれと思ったのと同時に、膝関節付近に激痛が走った。とっさのことなので着地に失敗したのだ。普段飛び降りる時は衝撃を和らげるように膝を曲げるところを、左膝を伸ばしたままがくんと着地してしまったのだ。あー、捻挫か肉離れしちゃったな。

骨折はこの付近

この後は左足を引きずりながら、泣きたい気持ちで駐車場まで戻った。帰路にはもう一つのハリオの滝を軽く撮影し、6回川を渡り、可憐に咲くバイカオウレンなども撮影し、と欲張ってはいたが、花の撮影は足が痛くてしゃがむのが大変だった。

ネットで足の痛みの原因を調べると、肉離れとの情報があり、まあ片足をひきずりながらでも歩けるからいいかと、翌日以降10日ほど和歌山大阪京都を撮影して回った。帰宅して念のため整形外科に診てもらったら、実は腓骨のひび割れと剥離の2か所の骨折で、簡易ギプスを余儀なくされ、まともに歩けるようになるまで1か月かかった。

やはり滝は怖い。事故があっても自己責任だ。

 

駐車場付近

  

遡上の途中風景

                         

  

植魚の滝

                                       

 

ハリオの滝

  

 

下流の風景

  

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