MONTHLY WEB MAGAZINE Sep.2010
■■■ 現存する日本最古の鉄筋コンクリート 野崎順次
Oldest RC in Japan
コンクリートは圧縮に強いが、引張りやせん断に弱いので、棒状の鋼材である鉄筋で補強したものが鉄筋コンクリート(RC)である。鉄筋にも弱みがあって、通常の条件下では錆びてしまう。
しかし、コンクリート中のセメントが強アルカリ性なので錆びない。
コンクリートが古くなるとアルカリ性から中性に変化して鉄筋がさびやすくなるが、割れがなく、ち密であれば、鉄筋コンクリートとして機能する。
高度成長期以降に施工した鉄筋コンクリートには50年もたないものがあると云われている。
その理由はいくつかあるが、端的にいえば、(施工費を切り詰めるために)施工効率を最優先にしているためである。骨材(石や砂)の品質低下もあるが。
一方、100年近く供用されている鉄筋コンクリートが日本にも残っている。
明治から大正にかけて、誇り高い技術者が入念に配合して施工した結果である。
未だに使用されている最古の鉄筋コンクリート構造物を調べてみた。
最古5例のうち、3例が京都にある。
(1)1900年(明治33年)製作: 横須賀軍港境域標、 150 x 160 x 2000mm、
横須賀港から土木図書館に移転、新宿区四谷1丁目 土木図書館横
(2)1903年(明治36年)竣工: 琵琶湖第一疏水 第11号橋、幅1.5m x 長さ7.3m、
京都市山科区日ノ岡堤谷町、メラン式アーチ橋、供用中
最古の「本邦最初鐡筋混凝土橋」の碑がある。
クラック(割れ)もなく非常に良い状態のようだ。
(3)1904年(明治37年)竣工: 琵琶湖第一疏水 山ノ谷橋(第10号橋)、
京都市山科区御陵黒岩、メラン式アーチ橋、供用中
クラック補修跡があるが構造的にはまだしっかりしている。当時の技術者、施工者の名前が基部に刻まれている。
(4)1911年(明治44年)竣工: 三井物産横浜ビル、4階建て、
横浜市中区日本大通14、供用中
オフィスビルとしては日本初の鉄筋コンクリート建築物として有名。
(5)1914年 (大正3年)竣工: 梅小路蒸気機関車館 扇形車庫、
高さ約10m x幅約30m x 長さ約200m
京都市下京区観喜町京都市下京区観喜町、供用中
工業施設としては日本最古の鉄筋コンクリート建築。
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