MONTHLY WEB MAGAZINE Aug.2011
■ 「天災か人災か 〜三陸被災地の状況(後半)」 瀧山幸伸
避けて通れない深刻な話題の後半です。
6月の三陸地方北側、宮古から南三陸町までの調査に加え、7月には宮城の石巻から仙台空港付近まで、地理的視点で被災地調査に行ってきました。
それぞれの被災地で因果関係を考えると、「もし対策を講じていれば」といたたまれなくなります。
多くの児童と教職員を亡くし悲惨だった石巻市の大川小学校ですが、この目で現地と周囲を確認して、問題は二つあると思いました。
一つは、学校用地の選定間違いです。
北上川河口付近のバックマーシュ(河川の後背湿地)に立地しており、海面との標高差はほとんどありません。
このように津波に弱い土地に学校という子供たちの命を守り地域の防災拠点ともなる施設を設けることは大きな間違いです。
もう一つは、社会工学的な間違いです。
避難マニュアルの不備、避難訓練の不備、避難路の不備などの間違いが重なりました。釜石ではその成果が出たのに無念です。
いずれの間違いも、管轄する当局の責任は重大ですが、日本ではこのような事故を天災として諦めてしまう傾向があります。
欧米では人災として責任を問い、二度とこのような事故を起こさない教訓とすることが常識となっています。
業務上過失致死傷罪として刑事罰を、民事では損害賠償の集団訴訟になるということです。人道的社会的責任ももちろん問われます。
福島第一原発の事故は人災として損害賠償の対象となりましたが、電力会社の当事者も役人も諮問学者も個人的には損害賠償責任も刑事罰も問われないでしょう。
「想定外」や「遺憾」などというあいまいな言葉が無過失なのか重過失なのかを問われない社会は健全な社会なのかどうか、難しい問題です。
私の住む東京で直下型地震が来れば、現在の防災計画の想定は全く役に立たないでしょう。
土木学会会長や国の防災会議委員を務めた濱田先生が警鐘を鳴らしているように、東京湾が火の海になって数週間燃え続け、航路が2ヶ月も閉鎖されると臨海部の発電所が燃料切れでダウンします。
地下鉄が水没することは既に想定されていますが、ほんとうに脱出できるのでしょうか。
現在お住まいの地域の防災計画書を熟読してみてください。ありえないような甘い「想定」が各所にあります。
災害への備えは自力で行うことが肝心。愛する家族のためには、住む場所や仕事の場所を変えるくらいの覚悟が必要と思われます。
各地の状況はこちらです。
宮城県 石巻市 女川町 東松島市 松島町 塩釜市 仙台市宮城野区 仙台市若林区
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