MONTHLY WEB MAGAZINE May 2012

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■■■■■ 壬生・八木邸と京都鶴屋・鶴寿庵の鶏卵素麺 中山辰夫

(京都市中京区四条坊城通四条南入西側)

「ガンガンデンデン」鉦の音が聞こえてくるとそこは“壬生”。新撰組とゆかりの深い所です。

新撰組屯所であった八木邸と京都鶴屋・鶴寿庵とは隣り合っており、八木家が営んでいます。旧前田家、壬生寺も近くです。

八木邸の見学はできますが、カメラ撮影は不可でした。(とりわけ写したい内容もなかったですが・・)

今回は見学の他に、別の目的がありました。それは鶴屋の「鶏卵素麺」を味わうことでした。

南蛮渡来から300年続く和菓子の味、全国で3軒しか作ってない“味”が楽しみです。

過日、恵那の岩村町で味わった、ポルトガル渡来時のままの製法によるカステラの食感がまだ残っている間に・・・。

八木邸

京都市指定有形文化財

さほど広く感じなかった。天井も低かった。芹沢鴨が暗殺された部屋や鴨居に残った刀傷がポイントでした。

京都鶴屋 鶴寿庵

八木家16代当主が和菓子を営んでいます。

町家風を取り入れたお店の構え。

店内の茶室

意匠も凝らしてあるように見受けました。

店内

新撰組にからませた名前の和菓子「屯所餅」などが多い。

現社長の八木勢一郎氏は八木家16代目です。幼い時は芹沢鴨が暗殺された部屋に蚊帳を吊って寝ていたと聞きます。

京都鶴屋は大阪鶴屋八幡の唯一の別家で、勢一郎氏の父親が大阪鶴屋で修業して始めた店。勢一郎氏は二代目です。

大阪鶴屋八幡は、元禄15年(1702)創業で、江戸時代の上方で高名であった老舗菓子店・虎屋伊織が前身の超老舗。

「鶏卵素麺」は京都鶴屋の一代目が大阪鶴屋での修行時代に、特別に伝授を受けたようです。

「鶏卵素麺」別名「エンゼル・ヘアー」

カステラ、コンペイト、ボウロなど16世紀頃ポルトガル人がもたらした菓子は南蛮菓子と呼ばれました。

「鶏卵素麺」もその一つとされています。

金色に輝く天子の髪の毛に似た、繊細で優しい感じから「エンゼル・ヘアー」とも言われたようです。

延宝年間(1673〜1681)、長崎に上陸した宣教師から福岡の「松屋菓子舗」にまず伝わり、堺から大阪の「鶴屋八幡」

に伝わったようです。

現在は、松屋菓子舗と大阪鶴屋、そして京都鶴屋の3軒でしか作られていません。

材料は卵と砂糖と水だけ。270個の卵(約20kg)から40本の鶏卵素麺ができます。卵は卵黄しか使用しません。

ジョウゴに似た道具を廻して、垂らし、掬い上げると9mの金色に輝く糸綛(かせ)が完成します。それは、染め上げ

られたばかりの絹糸のように輝いているようです。

食感は、さほど甘くもなく、黄味の風味が口に広がり優しい感じがしました。当時は超高級品だったと思われます。

松屋菓子舗 福岡と鶴屋大阪(いずれもHPより)

岐阜県恵那市岩村町の「松浦軒本店」は、ポルトガル伝来の製法によるカステラを今も製造・販売されています。

「卵黄素麺」とも似た食感で、べたつきもなく、サラーとして口あたりもよく美味しかった。評判もいいようです。

町家探索と称して似た町家ばかり見て廻っておりまが、時折起こる意外性の出会いを楽しんでおります。

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