Monthly Web Magazine July. 2015
■■■■■大阪駅前地下道の「アリバイ横丁」 野崎順次
最近、大阪市梅田1丁目、大阪駅前地下1階、阪神百貨店周辺の最後の店が立ち退きとなった。阪神百貨店の建て替えや地下道拡幅が始まるからである。串カツで古くから有名な松葉やぶらり横丁の七福神は最後まで抵抗の姿勢を見せて話題となった。それとは別に、いち早くひっそりと消えた地下道名物店の並びが「アリバイ横丁」である。昭和26年(1951)に全国銘菓名物街として始まり、昭和45年のピークには32店だったが、最後には3店残っただけだった。
横丁という呼び方は不自然だと思う。広辞苑によれば、「表通りから横に入った町筋。よこまち。」とある。ここのロケーションは東西を結ぶ地下道で、表通りに近いと思う。だから、アリバイ通りというべきか?
私は小さい頃から梅田によく来ていて、これら全国都道府県のお土産を売る店の前を何度も通った。それぞれの店は幅約3メートル、奥行き50センチ程度で、壁のくぼみである。売り子のおばちゃんは中に座れないので、外(地下道)に椅子を置いて座っていた。土産物に美味いものなしというが、いかにもそういうもので、安価なものが並べられていた。
大阪にいながら全国の土産が買えるから「アリバイ」なのである。大阪のおっさんが、奥さんには広島に出張するといって家を出る。大阪駅で愛人と待ち合わせ、反対方向の熱海にいって熱い時を過ごす。そして、帰りにアリバイ横丁の広島県物産店で「もみじまんじゅう」を買い、必要なら日付をごまかした領収書をわざとらしくポケットに入れ、本妻と子供の待つ自宅に帰るという訳だ。熱海のホテルのマッチなどは決して持ち帰ってはならぬ。
昔、私は一回だけアリバイ横丁で買い物をしたことがある。とはいっても、上記のような事情では絶対にない。断言する。断言します。信じて!その時、どの店で何を買ったか定かでないが、「領収書の日付と賞味期限の日付はいつにしましょうか?」と聞かれたのを覚えている。チョイスできるんだ。
時代は移り、交通機関が発達しインターネットが普及して、アリバイ工作が高度化・巧妙化(あるいは稚拙化)したためか、アリバイ横丁は平成26年(2014)3月29日に完全閉店した。