JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Dec. 2017

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■ 今年の紅葉雑感  田中康平

紅葉ははもう街でも悉く散り寒波の波状的到来が続いている。

秋の紅葉と花が一斉に花開く春とどちらをよしとするか、これは昔からの話題であったようで、万葉集でも額田王の春秋判別歌(巻一)では 黄葉をばとりてそしのふ、秋山吾は と秋のもみじに軍配を上げている。そんな歌を持ち出すほどでもなく秋の紅葉は見逃せない。今年の紅葉はどうだったか。今年は福岡市からせいぜい1泊で行ける範囲での紅葉を巡ってみた。

まず10月の終わりに雲仙の紅葉はと仁田峠付近を訪れた。北部九州では紅葉でも有名なところではある。

ロープウエーの下から上のあたりがまずまずの見ごろだったが、無論東北の山々には及ばない、印象としては雲仙地獄めぐりの背景にちらちら見える紅葉の感じが良い。九州では紅葉はマスで圧倒してくる光景にはお目にかかったことがなく人の営みとの絡みのある紅葉がいいように思えている。

後は11月上旬に福岡市郊外の弘法大師にゆかりのある笹栗霊場の呑山観音の紅葉を観に訪れた。ここも紅葉ランキングにあげられる場所ではある。造園された紅葉の印象が強いがドウダンツツジの紅葉はちょっと面白い感じがするし、蕎麦がうまい。というよりどちらかというと蕎麦の方が印象深い。

朝倉の紅葉はどうだろうかと11月下旬には秋月城址にも出かけた。水害の影響は特には目につかない。ここの紅葉も名所の一つで人出が多いが背後の山には紅葉は全く見られず狭い範囲の紅葉だ。それなりには美しい。しかし秋山の紅葉というより参道の紅葉だ、規模がない、作られた紅葉の感がある。

久留米の近くの太原(たいばる)というところのイチョウの紅葉が地元紙のカレンダーにもなっていてインスタ映えするらしいと11月の終わりころに出かけてみた。銀杏をとるために植えられたイチョウのように見受けられる。敷き詰められた落ち葉とつながった黄色の世界が面白いがやはりしつらえられた紅葉で感動といわれると薄いものがある。如何にも九州の紅葉という感じでもある。

もう紅葉も終わりかと思って近所を散歩すると黄色いイチョウが赤いトウカエデの葉といい重なりを見せたりして公園の紅葉も十分美しい。額田王の歌にもある通り紅葉は手に取っても楽しめるところがよくそれは近くの公園でも同じことでむしろこちらの方が心を楽にして存分に楽しめるようにさえ思える。

紅葉はやはり自分の心を写して楽しむところがいいようだ。

写真は順に 1、2:雲仙仁田峠付近の紅葉 3、雲仙地獄の紅葉風景、4.呑山観音のドウダンツツジ、5.秋月城址の紅葉、6.太原のイチョウ、7.自宅近くの公園、8.自宅のイロハカエデ

       

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